BLACK
□change the world
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抱き合ったあと、ソファに二人無言で沈んでいた。なにか彼が言葉を発しようとすればすべてその前にキスで柔らかく言葉を吸い取った。言葉が怖い。
いつか告げられる終わりの言葉が
時計はもう8時過ぎ。与えられた時間は、終わり。
「−−そろそろファイを迎えに行ってあげて」
「‥そうだな」
ゆっくり彼が立ち上がり身支度を整える。オレもだるさを振り切ってなんとかシャツを羽織り、体裁を整える。大きな手がのびてきて髪を梳いてくれた。
「‥ありがと」
その手に自分の手を重ねる。とてもあたたかい
だけど彼がぎゅっと眉を寄せ、苦しげに口元を歪めたから。少し早口に次の言葉をつなぐ。
「‥ごめん、キリがないね。早く行ってあげて。あの辺り通り魔が続けてでたんでしょ。待たせちゃダメだよ。でも、行く前にちゃんと、シャワー‥浴びてね」
さあ早く、とせかしたオレの視界は突然真っ黒になる。それは彼のジャージで。抱きしめられたのだ、と理解すると同時に低く、うめくような声で。だけど強く囁かれる
「大丈夫だ‥また来る」
次の瞬間には彼は体を翻して窓から出て行った
ファイのところへ行くために
今まで包まれていた熱を失って急に体温が下がった気がする。
「ホント、黒鋼先生はひどいね‥」
どうしてオレの欲しいものをいつも見抜いてしまうんだろう。
「だから‥だから離せなくなるんだよ‥」
自分で自分を抱き抱えるようにしてふらふらとソファにへたりこんだ。でもいくら自分で体をさすっても足りない。もうあの熱を知ってしまっては、あの熱でないと満たされることはないのだ。
きつく、自分の腕に爪をたてた。