及影story
□ダメ川くんの誕生日
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今日は及川にとって特別な日である。
しかし、肝心な彼、本人はというと‥‥
「ねぇ、岩ちゃん?今日以上に最悪な日はないよねぇ。」
今はもう午後だが、朝からずっとこんな調子である。
最初は「主将!しっかりしろ!」「おいクソ川!」
など、声をかけていた岩泉も途中から
「こうなった及川は影山にしか多分止められないだろう。」
と言い、自分がキャプテンの代わりとしての
役目を補っていた。
国見や、金田一もはじめは話を聞いていたものの、
これは捕まったら逃げられなくなる。という
野生の勘が働き、逃げることにした。
こんなに面倒な及川の相手をするのは
部員が耐えられそうにないので
岩泉が影山にこっそりメールをしてみるが
今だ返信はない。
はやく助け舟を出してくれないかと
途方に暮れている岩泉だった。
そう。今日は及川の誕生日なのだが
恋人である影山から一斎メールや電話がこないので、
及川は今日1日中、萎えているのであった。
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一方、影山は朝、寝ぼけながら歯を磨いてる最中
ふとカレンダーをみて今日が及川の誕生日であることに気づき
急いでメールを打とうとしたが
文が浮かばず、思いついたと文を打とうとした瞬間
手を滑らせて洗面台に携帯を落としてしまった。
慌てて拾い上げたがびちょびちょで
防水タイプではない影山の携帯は
既にお亡くなりになっていた。
オマケにまさかの展開で画面もバキバキに割れていた。
もし、仮にドライヤーなどで乾かして
ついたとしても、画面がこんなに
派手に割れていれば、操作も
できないだろう。
こんな偶然があるかと思ったが
朝練に遅刻しそうだったので、
そのまま着替えて家を後にした。
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今日1日、授業を受けていてすっかり忘れていたが
今日が及川の誕生日であることを思い出す。
誰かに電話を借りた方がいいのか‥‥?
考えるに考え、いつもは楽しく短く感じる部活が
早く終わらないかと思っていた。
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しばらくすると及川の携帯が音を鳴らす。
及川は急いで携帯の画面を見ると
それは知らない番号からの着信で
少し気を落とすが、とりあえず
でてみることにした。
「もしもーし」
やる気のない声色でそういうと
自分の今一番聞きたかった声が返ってきた。
「あ、もしもし、及川さん、ですか?」
「え、あ?と、とびお!?」
我ながら情けない声を出してしまったな、と思う。
「すみません。携帯壊れてて、連絡できなくて、
今は日向の携帯を借りてるんスけど
えっと、あの、誕生日おめでとうございます。」
思う存分文句をたれてやろうと思っていたが
そのような理由なら仕方ない。
チビちゃんの携帯をかりてるのが
気にくわないけどね。、
「いーよ、今から会いに行くから。」
「え、俺が行くんで及川さんは待っててください!」
「いーって、連絡取れなくなったらコマるでしょ。」
そう言ってやるとしゅんとした声で
「はい。」という言葉が返ってきた。
電話越しにでも彼が唇を尖らせてるのがわかる。
「電話は切らないでよね」
「はい。」
そう言ってまた話し始める。
「あ、岩ちゃん、後はまかせたよ。」
「おう。」
そうして及川は荷物を持って
軽い足取りで部室を出ていった。