狩り人
□4羽
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「キルア、もう一度会えてよかった。今度は私が会いに行こうと思っていたから。」
私がキルアを見て安堵した気持ちをそのまま告げると、キルアは私の方を見ないで反対を向いたままだ。
「にしてもよく他の連中に見つからなかったな。」
「多分、見逃してもらったんじゃないかな。私だと分かって。」
「ふぅん。」
そして招かれたお父様のいる部屋。
扉を開けると、いくつも置かれたふかふかのクッションの上に胡坐をかいて座っている。
その横には、そんなお父様よりもずっと大きな犬が眠っていた。
「キル、・・・と、グレッグの娘か。これは懐かしい。」
キルアを呼ぶときには確かに感じた親の顔。けれど、私を見たときには、私の姿に父を重ねて少し寂しそうに感じた。
その後、お父様はキルアに友人が出来たってそう聞いてきた。
どうこたえようか迷って、キルアはうん。と一言だけ答えた。
「どんな連中だ?」
お父様の声は、威厳的でいて、それでいてとても優しい、そんな声。
「どんなって、」
そう言って少し考えたそぶりを見せると、
「一緒にいると楽しいよ。」
お父様は歩み寄ろうとしているが、キルアがまだそれを拒んでいる。そんな印象を受けた。
「そうか。」
お父様はほんの少し考えた。
「試験はどうだった?」
「ん・・・、簡単だった。」
こうしてまた、会話が途切れてしまう。
なんだこの不器用家族。
私は指にオーラを集結させ、”近くで話そう!”とメッセージを送る。
その後も目でキルアを見つめる。
その行動はキルアがお父様に委縮してずっと下を見ているせいでバレていない。
「キル、こっちに来い。」
唐突なお父様の言葉に顔を上げる。
「お前の話を聞きたい。」
お父様はつづけた。試験でどんなことをして、誰と出会い、何を思ったのか。
どんなことでも知りたい。と。
それは今まで尊敬すべき威厳ある父親であったその人が、ほんの少しだけ、近い人間だと思ったから。
それからキルアは恐る恐る初めて見る親し気な父親の側へ寄る。
私は先ほどキルアが座っていた椅子に座る。
私、ずっと立ちっぱなしだったからね!!瞬閧も使ってとっても疲れているの実は!!
フードもはじけ飛んでるし!!
それからキルアは私の出会いから話し出す。
「それでコイツ、結局俺と一緒の部屋取るんだぜ?ほんっと色気ない奴。」
「おいキルア君、それは聞き逃せないなあー!!知ってるんだぞ!!実はキルアが居乳が好きだって!!」
「はあっ!?」
そして試験が始まって、ゴンと出会って最終試験でゴンとハンゾーの話をする。
お父様は穏やかな表情で笑っていた。ゴンを面白い子だと言って笑っていた。
「それでさ―――」
「キル。」
まだ話したりなさそうなキルアをお父様が呼ぶ。
キルアの表情が固まってしまう。それでもお父様は続ける。
「友達に会いたいか。」
そう、孫権に問いかけた。この家に帰ってくるまでに、友達は要らないと、そう断言されて帰ってきたのだ。
キルアの目がまた下に下がっていく。
遠慮することはない、そうお父様が言っても、そう簡単に言わない。
「私はキルアに会いたいけどなー。会いたいから乗り込んだわけだし。完治しないまま乗り込んだわけだし。
ゴンだって会いたいから来てる。それを電話してキルアに会いたいって言ってる。
折角キルアのお父様が素直に言っていいって言ってる。言うしかないよ。」
お父様ははっはっはと笑いだす。
「そうだぞキル。」
そう肯定してから、自分の手を見つめる。
「思えば、お前と父子として話をしたことなどなかったな。
俺が親に暗殺者として育てられたように、お前にもそれを強要してしまった。
俺とお前は違う・・・。お前が出ていくまで、そんな簡単なことに気付かなかった。」
お父様はその大きな手をキルアの頭に乗せる。
「お前は俺の子だ。だが、お前はお前だ。好きに生きろ。」
そしてキルアに目線を合わせる。
「疲れたらいつでも帰る提出くればいい。な・・・?」
そうキルアに告げた上で、
「もう一度聞く。仲間に会いたいか。」
お父様がそう問いかけると、
「うん!!」
キルアはちゃんとお父様の目を見てはっきりと意志を告げた。
「・・・わかったお前はもう自由だ。だが、」
お父様は親指を出してその指の腹を噛んで血を流す。
「絶対に仲間を裏切るな。いいな。」
お父様はじっとキルアを見つめる。キルアも同様に親指の腹を噛んで血を流す。
「誓うよ、裏切らない。」
そして、その親指を合わせて指切りよりも硬いその約束を交わす。
「絶対に!!」
「キルア、私も友達だよね!?むしろ一号なんだよね!?」
ずっとゴンの話ばかりで、私の存在が出ていない事に気が付いてキルアに詰め寄った。
お父様はきょとんとした顔で見ている。
「なんだ、お前らまだ付き合ってなかったのか。」
「「へ??」」
お父様の発言に二人して驚く。
「お前ら、誰が見てもバカップルにしか見えんぞ。」
お父様は豪快に笑ってる。
けれどそれどころじゃない。
「うぇええええ!?!?いやいやいや!!!キルアさんとは友情的な意味でお付き合いをしているわけで!!
そんな恋慕の情でそのお付き合いを・・・・!!き、キキキ、キルア大変だよ!!みんな誤解してる!!」
「バカ!!お前がそんな狼狽えるから余計誤解されんだろうが!!」
「ででで、でも!!!道理でおかしいと思ったんだ!!あのさらっさらの黒髪野郎が私の事をゾルディック家との子供生産機扱いしたの!
ってそうだよそうだよ!!お父様!!なんですか!!あのさらっさらな長男!!
遠回しに肉便器扱いですよ!!私絶対許しません!!もしゾルディック家に嫁ぐことが決まっても、
あの人の子供だけは腹ぶっさしてでも生みません!!」
私は勢いのままお父様の胸ぐらを掴む。
「はっはっは。それは大丈夫だ。君はキルとの子を成してもらうだけで充分さ。」
「待ってください、何故にキルア君限定??」
「はっはっは!!」
キルアに助けを求めようと視線を向ければ、素知らぬ顔で座っていた。
キルア君んんんんん!!!!