銀魂

□異なる兄
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人をたくさん殺した夜、私はお兄様と一緒に寝る。
別に殺すことに罪悪感を持つわけでも、そのことで悪夢にうなされるわけでもない。
ただ、お兄様がいつも私を気遣ってそばにいてくれる。
今日は少し違う。同じ新選組の隊士を大勢切り殺した。
私に優しくしてくれた人は皆私に取り入ってお兄様に近づこうとしている人たちだった。
お兄様の場所、新選組を消そうとする人たちだった。

その人たちを私を使って炙り出して肉塊にしあ後にお兄様は一緒に寝てくれたのだ。

自分よりずっと高くてがっしりとした体に包まれてほかほかな気持ちで眠る。


目が覚めると、お兄様は髪を切り幼くなっていた。

不思議そうに腕の中でお兄様の顔を見つめていると、その目がゆっくりと開き、殺気だった目で私を見た。

「オレの布団にどーやってもぐりこみやがった。」

あれれ、お兄様、声変わりしました?

「昨晩お兄様がご褒美として私と一緒に寝てくれたではありませんか。寝ぼけてますぅ?」

やれやれ、お兄様ったらおとぼけさんなんだから。
そう思って笑うと布団からけり出された。

「お、お兄様?寝起きは確かに夜叉がご降臨されたと揶揄される程に最悪でしたけれど、私を見間違って蹴り飛ばすなんてことしなかったのに。」

「さっきから誰と勘違いしてやがんでぃ。オレに姉はいても妹はいねーよ。
多少顔が似てはいるようだが、他人の空似だ。」

今まで言われたこのない口調だった。
家族だと思ってた、唯一の肉親からの拒絶。
今まで優しく敬語で話しかけてくれたお兄様が、私にそのような口調・・・・。


「お兄様が私にそのような粗雑な口調を・・・!!私嬉しいですぅ!!」

思わずお兄様に抱き着いた。


「てめ、気配なく抱き着いてくんじゃ、うわナニコレ、化け物みたいに解けねえんだけど。」


「私が抱き着いても振りほどこうと本気でなさらない当たり、優しさは隠しきれてませんねお兄様!!
ツンケンしていても、お優しいですぅ!!」

「バカ言ってんじゃねえ。振りほどかないんじゃねーよ、振りほどけねぇんだよこの化け物。
男の力で振りほどけないたあ、てめぇ天人か?いい加減放せクソガキ。」

そう言ってお兄様は私の頭をげんこつで優しくはたいた。

「力いっぱい殴ったのに俺が痛いんだけど。骨俺そうなんだけど。」


そんな会話をしていると、ドタドタと足音が聞こえ、ふすまが勢いよく開いた。


「てめえいつまで寝てやがんだァ!!!!総悟
ォ!・・・・。すまねぇ、邪魔したな。」

やって来た瞳孔が開きっぱなしの死体のような瞳の男は不躾に部屋に入り込み、私たちの様子を見てそっとふすまを閉めようと背を向ける。

「待って下せぇ土方さん。こいつは誤解でさぁ。そもそもオレはこの女なんてしりゃしませんぜ。」


「あ゛?んなわけねぇだろ。てめぇ、屯所に女連れこんだ言い訳するならもっとましなウソつけ。」

二人は私をそっちのけで会話し始めた。

「本当に知らねぇんです。起きたら布団の中にいやがったんでぃ。
・・・つかてめぇはいつまで俺にしがみついてやがんだ。さっさと離れろこの怪力娘。」

お兄様は何度も私の手首をつかみ剝がそうとsている。どうやら本当に離れてほしいようだ。
仕方ないのでその手を放し、お兄様の布団にもう一度潜ろうとして気が付く。

「あれ、こんないい布団で寝てましたっけお兄様。
そもそも布団じゃなく着物かけて寝てましたよね?あれれ?」

「・・・どーいうことだ?」

瞳孔開いた黒髪はさらに眉間にしわを深めた。

「だから俺にもわからねぇんです。急に現れたかと思ったら俺を自分の兄だと勘違いして話がすすまねえんでぃ。」

「よく見りゃ確かにおめぇの妹つっても信じられるほどよく似てやがる。
なついてんならそのまま妹にしちまえば?」

「何言ってやがんですか。どこぞの間者かもしれないガキを妹になんてできるわけねえ。
そもそもどうやってここに入ったかすらわかってねぇんですぜ。」

二人の会話を理解できずに聞き入ることにした。

「それもそうだな。おいガキ、どーやってこの屯所に入ってきやがった。誰の手引きだ?」

間者であったならそんな質問じゃあ答えないであろうド直球な質問に呆れて溜息をこぼす。

「間者だと疑っている相手にそんなド直球に聞くバカがいますぅ??
お兄様、この方尋問に向いてませんよぉ、それにお兄様の部屋に朝なのに夜這い仕掛けに来る不届きものです。
即座に首を切り落としましょう!!」

「何この娘。腹立つんだけど。顔が総悟に似ている分腹立つんだけどナニコレ。」

「だから俺はてめぇの兄じゃねえって何度言えばわかんでぃ。
てめぇに脳味噌は詰まってんのか?ん?」

「ふん、瞳孔だって開いています。そろっと死にますよこの人多分。だから死ぬ前に絶世の美少年と言われたお兄様と一晩・・・!」

「気色悪い妄想をやめろ。頼むからもう口を開くなホント尾根がだから。」

「お兄様の貞操は妹である私が守りますよ!!そのために私が共に寝ているんですから!!」
あーもう話が通じねー。そもそも話聞かねー。頼むから黙るか死ぬかしてくんねぇかな。」


「ふふん、ほら見ましたか!!あなた!死を願われていますよ!!」

「ずっとてめえに言ってんだよ。ここまで会話が渋滞起こしてんじゃねえか。」

「・・・・なんかもう、妹ということでいいじゃねぇかと思い出した。」

「土方さん諦めねーでくだせぇ。オレは認めない。」


「あ、そういえばお兄様髪を切ったのですねとても素敵です。」


「・・・・はあ。」










 
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