夜空にかざしたブーゲンビリア

□第1話
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露天風呂には草木もあって、雪まであった。
ふつう日本はこの時期に雪は降らないと聞いていた。
でも、こっちの方が風情があって私は好きだ。

雪、それを見て思い出すのはいつでも故郷のことだった。
そうロシア、それからヴィクトル、マッカチンも、ユーラチカ達のことも。
彼らはいつもひたむきにスケートと向かい合っている。
なのに私は音楽から逃げた。
ヴィクトルからも…。
「会いたい…」
瞳にじんわりと涙がにじむ。
私はハッとして首を横に振り、両手で両頬を叩いた。
自分の行動にはちゃんと自分で責任をとる、そう決めて旅に出たのだから。

どうせだしご飯も食べて行こう、そう考えつつロビーに戻ると、私は目を見張った。
目を引く高い身長に雪のように白い肌、凍てつく氷のプラチナブロンド。
間違いない、彼だ。
そう確信したときには先ほどとは比べ物にならない程大粒の涙が溢れる。
彼の隣に立っていた男性が私に気づいたらしくあたふたしていると、ついに彼が振り返った。
…一年ぶりの再会だ。
「エヴァッ!!」
次の瞬間には視界は真っ暗になって、私の鼻腔は彼のにおいで満たされていた。
「バカっ…心配かけて……」
「…ごめん、ごめんね。ヴィクトル」
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