story

□黄金
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『連れてってやるよ、仕方ねぇから』




その一言で三蔵は
彼を暗い岩牢から連れ出した




彼は眩しい大地や太陽に
目を細めながら辺りを見回している

すると、私とも目が合う




「あ…」

そう言えば同じ歳の子と
会話なんてした事無かった
まさか魔物がこんな男の子だったなんて。

すると助け舟…とは違うかもしれないけど
三蔵が「おい…」と一言




「出してやったんだ、
勝手に好きなところへ行け」

行くぞ、と背を向け山を下り出す三蔵



「え?三蔵?!」

驚きの行動に慌てて後を追う



「置いて帰っちゃうの?」

「チ…これだからガキは嫌なんだ」

「?」

首を傾げ振り向いて見る
すると、先程の男の子が
後をついて来て居た



「おい…
何処まで着いて来る気だてめぇは!」

眉間にしわをよせ、
いつもの早口で怒鳴る



それに男の子は目をパチパチさせ

「何で怒ってんの?」

と一言。



「あのなぁ
あそこから出してやったんだ
もう俺に用はねぇだろうが!
何処へでも好きなところへ行きやがれ」

「三蔵!」

この人は本当に鬼だ。
ギリリと三蔵を睨んで居ると
「チッ」と舌打ちをし目を逸らした。



「…ごめんなさい。
素直じゃないの、あの鬼」

三蔵に指を指しながら
苦笑いで男の子に謝る



「う、ううん。
出しくれてさんきゅー
だけどさ俺…此処がどこかも
何処に行けばいいかも分かんねぇんだ」



気づいたらあの中にいた。
ずっと、ずーっと昔から。




「…お前まさか
本当に500年幽閉されてた
とか言うんじゃねぇだろうな」

ごくり。と私も息を飲む

男の子はうーんと考え



「ってどんくらい?」

ガクッ
あれ?本当に私と同い年くらいだよね、もっと下かなぁ。



「ねぇ名前は何て言うの?」

「あ!それだけは覚えてる。
俺はね、ごくー」

「いいか!」

名前を言ってくれたけど
三蔵の大きな声にそれはかき消された



「てめぇが何者なんざ興味ねぇ、さっさと失せろ
さもねぇと…ぶん殴るぞチビ」

「ななッ!
何だよその言い方!
この垂れ目!おたんこなすー!」

「サイテイ!はげー!!」



ぴくぴく眉間にしわがより
ゆっくりとこちらを向き拳をあげる

「良い度胸してんじゃねぇか…このクソガキ共ッ!」



イッテェ!と2人して頭を抱える
三蔵も容赦ないなー本当に!
そこからも三蔵と男の子は何度か言い合いを続けてた




「…ん?」

茂みの方からカサカサと物音がした
すると妖怪
…では無く盗賊が複数人現れた。

「何?ワルモノ?」

「チッ…さっさと片付けるぞ
今のうちに消えちまえ」

三蔵は私を背後に隠し
戦闘体制へと入る



が、その瞬間



先程まで背後にいたはずの男の子が、
頭上を通り過ぎ
いとも簡単に盗賊どもをやっつけてしまう。

「え、え?」

あまりの動きの早さに言葉も出ない。



バケモノ…だと
まさかこいつほんとに



「へーんだ、ざまみろ!」

嬉しそうにそう言えば男の子は
その場でうずくまってしまった

「どしたの?何処か怪我?!」

だが返事は無く、かわりにお腹が大音量で鳴り響いた

それを聞いて内心ホッとした自分と
「ありえねぇ」ともらす三蔵



見れば男の子は涙を流していた
この500年間空腹
という感覚か無かったらしい
ずっと暗くて叫びたいけど
呼べる名前何て何もない。




「…ねぇ、アンタらの名前教えてよ。
今度はちゃんと声出して呼ぶから」

「…第三十一代目東亜玄奘三蔵だ」

「ぞうだ?」

「プッ!」

「第三十一代目東亜玄奘三蔵!」

「えーっと…
じゃあ、さんぞー!」

「…勝手にしろ」

そう言われ三蔵は
少し嬉しそうだ



「なぁ、アンタは?」

「わたしはヒカリ!
年も近いと思うし、よろしくね」

後ろで手を組み笑いかける
なんだかこういうの照れちゃうな…



「ヒカリ……
良い、名前だな!」

「ありがとう…!」

名前を聞いた時、
時間差あったけど何だろう?
気のせいかな。



「おい!置いてくぞ」

「あ!待てよーさんぞー!」

「うるせぇサル!」

「サルじゃねぇよ、俺の名前はー!!」




























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