コードブルー―ドクターヘリ緊急救命―

□第1話
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ロッカールームにやって来た彼女は、自分の名前があるロッカーを開ける



着替えると、胸ポケットに3色ボールペン1本とペンライトを差し、首から下げたID兼名札を付ける



IDには「佐伯 咲子」と名前があり、その下にはローマ字で「Syoko Saeki」と書かれている



翔陽大学附属北部病院、通称は翔北



今日から彼女・佐伯咲子を含めた5人のフェロー達が、ドクターヘリ専門研修生として、この病院に勤める



髪をヘアゴムでひとつに束ねると、ロッカーのドアを閉めた



咲子「・・・・・・さあ行くよ。咲子」



ひとり呟き、ロッカールームを後にした




















藤川「きょ、今日はよろしくお願いします!」



後ろから走ってきたフェローのひとり、藤川一男が言った



森本「ID付けて」



藤川「え?」



森本「ID」



藤川「名札・・・よろしくね!よろしく」



他のフェロー、緋山美帆子、白石恵、そして佐伯咲子によろしくと言う



もうひとりのフェロー、藍沢耕作には背中を叩いてよろしくと言う



森本「救命センターには、毎日平均7、8人の患者がヘリか救急車で搬送されるんだ。ほぼ全員が、二次か三次救命の重傷者だ。まずはICU」



歩きながらされる説明を聞き、森本忠士に着いていく5人



ICU



集中治療室、Intensive Care Unitの略だ



森本「この内の10床が、救命の患者ね。戸倉さん、意識レベル上がった?」



「いえ、変わりません」



森本「そう」



それを聞くと、すぐにICUを出る



森本「今の患者が、熱射病による蘇生後脳症」










森本「ここが、ナースステーション。あ、DVD明日返す!ごめん。HCUはこの裏」



紹介しながら何かしらの説明やコメントを述べ、HCU(高度治療室/準集中治療室〈High Care Unit〉)へ



森本「ここが15床」










森本「ここが一般病棟。この内の25床が、救命の患者ね」



コンコンッ



森本「こんにちは」



咲子「?」



ある一室に入った時、咲子は一番奥のベッドにいる少女が、最初に目に入った



森本「美樹ちゃん、どう?ちゃんとお薬飲んでる?」



美樹「飲んでるよ。うっさいなぁ」



森本「うっさいなって、お前・・・CT検査もね。頼んだよ。あ、今日から勤務の、お医者さん達です。よろしくお願いします」



その言葉に5人共が頭を下げて、軽く挨拶をする



藤川は美樹と目が合ったのか、「よろしく」と笑顔で手を振った



病室を出てからも、話は続く



森本「さっきの子は、若年性糖尿病に腎不全。右腕に感染症を併発して運ばれた。コンプロマイズドホストだな。救命の患者は、いつ誰が容態急変するかわからない。その時、誰がいても対処できるように、50人全員の病状を把握しておく必要がある」



藤川「あ、あの・・・50人のですか!?」



森本「60人がいい?」



藤川「あ、いや・・・」



森本「で、さっきの戸倉さんの病状は?」



藤川「は?」



森本「はい」



指を差され、答えろと言うかのように話を振られた緋山



だが彼女も答えられず、別の人物達から声が上がる



白石・咲子「「熱射病による蘇生後脳症です」」



森本「合格。まあこんな感じ。ICU、HCU、一般病棟、そしてヘリ担当。ヘリ担当は、専用無線機を持つ。全てを日替わりで担当してもらうから。カルテはそこにある。全員の病状、把握しといて」



緋山「あの!初日からヘリに乗れたりするんですか?」



森本「はは、いい笑顔だねー。でも無駄だよ、ここじゃあ。乗れるか乗れないかは――」



丁度その時、森本のPHSが鳴り響いた



森本「はい・・・・・・了解。君達の大好きなヘリが戻ってきたよ。Go!Go!Go!」



走り出した森本に続き、5人も走り出す




















ヘリポートに到着した患者を、院内にストレッチャーで運ぶ



患者は団地3階ベランダから転落した、73歳の女性



目の前で着々と作業が続く



黒田「挿管してくれ」



藤川「フェローの藤川です!挿管します!」



緋山「・・・緋山です!ファストやります!」



藤川「入らないな・・・吸引お願いします」



冴島「はい」



なんとか挿管しようとする藤川だが、モタモタしている上、患者が吐血した



黒田「もういい、下がれ。切開セット、チューブ6用意して!」



「「はい!」」



だが患者の側に立ったのは、指示を出した黒田ではなく――



藍沢「メスください」



一瞬だが、時が止まった気がした



が、すぐにライトが当てられ、藍沢の手にメスが渡される



藍沢は躊躇いや戸惑いなどと言ったものを全く感じさせず、素早く処置を行っていく



それを、黒田医師を始め、他の医師や看護師達が見ている



反対側に回り、黒田はただ黙ってじっと見つめる



「戻ってきました」



バイタル音が安定したものに変わり、緊張の糸が少し緩む



黒田「もういいぞ」



藤川「・・・あ、はい」
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