△▼お話△▼

□Summer
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「あつい」
「ん」
「あついよ」
「んー」
「ねぇ…」
「なに?」
「あついってば。離れて」
「やだぁ」
「なんで」
「あかねの肌、冷たくて気持ちいいんだもーん」
「はぁ…」


8月。季節は夏真っ盛り。


外の世界は、空は青く澄み渡り、太陽はギラギラ輝いていて、蝉たちが大合唱している。


「あかねー」
「ん?」
「海行こ、海」
「いつ?」
「これから」
「ここどこだと思ってんの。東京だよ?大都会だよ?」
「知ってますー」
「寝言は寝て言え」
「うっさい」


シングルベットに押し詰め状態になりながら2人でだらだらと寝転ぶ。


扇風機から僅かに送られてくる風が唯一の助け。


はぁ、暑いっていうのにさっきから私にべったりなこいつ。


どうにかなんないかなぁ………


「それよりさ、まなかんち行こうよ。ここじゃ暑い」
「やだ。親いるもん」
「なに、反抗期?」
「別にそういうわけじゃ」
「じゃあ、なんで」
「あかねと2人っきりでいたいだけ」


なにその理由。うける。


「うちも夕方くらいには帰ってきちゃうよ?」
「えぇ〜」
「じゃあ、カラオケ行こ。まなかこの前行きたいって言ってたじゃん」
「んー、今、お金ない」
「………じゃあさ」
「うん」
「……いい加減離れて」
「だから、やだ」
「暑すぎて死にそうなんだけど」
「あかねの部屋のエアコンが壊れてるのがいけないんじゃーん」
「そんなの私に言われても」
「じゃあー、怖い話する?」
「結構です」
「…なんか今日のあかね冷たくない?」
「まなかがべったりくっついてくるせいで暑いから」


相手をするのが面倒になったから、まなかに背を向ける。


「なんでそっち向いちゃうの」
「…」
「ねぇ、こっち向いてよ」
「やだ」
「あかね。」
「…」


すると、首筋にチクッと痛みが走る。


「ちょっ…まなか!なにすんの」
「なにって、チューだけど?」
「チューだけど?じゃないわ。痕、付けないでよ」
「いいじゃーん」
「夏は嫌でも露出度高くなるんだからやめてって言ってるよね?」
「やめてって言われると逆にねぇ…?」
「もう…!いい加減、おこっ……」


威嚇をしようと振り返った瞬間、突然キスをされ口を塞がれる。


「あかね、怒っててもキスされると大人しくなっちゃうよね」
「っ…!」
「かわいい」


そう言うと、まなかはにたりと笑った。


その顔、なんか腹立つ。


間髪入れずにまた何度もキスをされる。


悔しいけど力が抜けちゃって突き返すことができない。


あぁ、やばい。完全にまなかに流れ持ってかれてる。


「まなっ…か…や…だ」
「や、じゃないでしょ…?ほんとは好きなくせに」
「っ…!」
「顔にそう書いてあるよ」
「…ばっかじゃないの」


ばか。まなかの、ばか。


ほんと、まなかに心底腹が立つ。


いつもいつも。


私と付き合ってるくせして他の女の子に平気な顔してほっぺにチューとかするし手とか握ってるし。


まぁ、最近の女子高生のスキンシップってそんなもんだから。って割り切ってはいるけど、やっぱり、ね?


「ねぇ、怒らないでよー」
「暑い。離れて」
「暑いなら、服、脱がせてあげようか?」


私の気持ちも知らずに呑気にそんなこと……


嫉妬の炎がメラメラと燃え上がる。


「まなかさ…」
「ん?」
「私のこと、本当に好き…?」
「急にどしたの…?」
「たまにすごく心配になる。まなか、他の女の子にもスキンシップ激しいじゃん?」
「そう、かな…?」


自覚症状ナシ。か…


「…」
「あかね…?…えっと、その…ごめんね。あの、悪いとこあったらすぐ直すから…」
「…ばーか」
「うっ…」
「まなかがそんなんだと私すぐどっかに行っちゃうからね」
「…やだ」


なのに何故だろう。どうしても嫌いになれない。


私はまなかじゃなきゃだめなのに、あなたはきっと私じゃなくても、他の誰かでも、いいんだ………


「まなか、好きだよ」
「うん」


好きって言い返してよ


その一言でどれだけ安心できることか


もうこれ以上、私を不安にさせないで…


お願いだから、私だけを見て



私に溺れてよ……





END.



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