△▼お話△▼

□従順な子
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この子は私にとーっても従順なわんちゃん。


私以外、愛さないし、見向きもしない。


私がそう、しつけたから。


「りさ」
「ん?」
「まーた告白されてたでしょ」
「え。あぁ…まぁ、うん。でも断ったよ?私にはねるがいるし。ていうか、ねるしか…愛せないもん。多分、この先もずっと」
「知ってる」
「ねるはさ、私のこと…好き…?」
「あたりまえじゃん」
「そっか、よかった」
「なんでそんなこと聞くの?」
「えっ…と、その、なんか私だけが一方的にねるのこと好きみたいだなーって思って…」
「なんでそう思うの?」
「ねる、あまり私に好き…とか言ってくれないじゃん…?」
「そうかな?」
「うん、なんとなく、だけど」
「そっかぁ」


耳としっぽを垂れ下げて、クゥーンと鳴いている犬みたいに、不安そうに俯く理佐。


ちょっとだけ悪戯心が芽生えて、その頬にほんの一瞬、口付けてみる。


「っ…!」
「ふふっ」


目まん丸くしちゃって、かわいい。


「ど、どうしたの…?急に…」
「んー?愛情表現、だよ」


理佐の反応があまりにも可愛くて、真っ赤に染まった頬にもう一度キスをしてみる。


「ちょっ…と、ねる…!」
「だめ?」
「だめ…じゃないけど」
「じゃあ、もっとしていい?」
「だめだめ。……ここじゃ、だめ」
「…じゃあ、りさんち行こ」
「えっ…!?」
「それなら絶対人目につかないでしょ?」
「……っていうか、その…、無理にしなくていいよ…キスとか…好きって言ってくれるだけで充分だし」
「無理になんかしてないよ。そのくらい、りさのことが好きってこと」
「……じゃ、じゃあ…たまにはねるんち行きたい」
「え、私んち?」
「うん」
「まぁ、いいけど」


そうと決まれば、理佐の手を引きそそくさと学校を出て、私の家へと向かう。







家に着くと、ただいまぁ〜と言いながら中へ入るが、私の声だけが寂しく響き渡る。


「あれ、誰もいないの?」
「うん。うちの親、共働きだし。いつも帰って来るの遅いんだ」
「そっか……じゃあ、これからは毎日ねるんち来てあげるよ。夜まで一緒に居てあげる」
「えっ…?」
「そうすれば、ねる、寂しくないでしょ?」
「……ありがと」
「うん」


理佐のこういう優しいところ、好き。


「でも、さすがに毎日じゃなくてもいいよ?りさのお母さん心配するだろうし」
「別に大丈夫だよ」
「ありがとう。気持ちだけ受け取っとくよ」


そんな話をしながら階段を上がり、私の部屋に着く。


「…何してるの?早く入りなよ」
「う、うん」


理佐はまるでロボットのような動きで私の部屋に足を踏み入れる。


「何?緊張してるの?おもしろいね」
「ねるんち来るの何気に初めてだから…」
「そこら辺にごろーんってしてていいよ」
「うん…」
「じゃあ、私、ジュース取ってくるね」


そう言い残してリビングへと向かう。


冷蔵庫の中から適当にジュースを手に取りコップにそそぐ。


一応、お菓子も持って行こう。



「はい、おまたせ」
「ん、ありがと」


リビングから持って来たジュースを渡すと理佐はぐびぐびと一気に飲む。


喉、そんなに乾いてたのかな。


「ねぇ、りさ」
「んー?」
「さっきの続き、しよ?」
「ゲホッ…!」


理佐は顔を真っ赤にしながらげほげほとむせている。


「そういうつもりでここ来たんでしょ?」
「っと……う、うん…?」
「なんで疑問形?」
「え、いや…その…」


いつもは冷静沈着でクールな理佐がこういう雰囲気になるとたちまちたじたじになってしまうところもかわいい。


「おいで」
「……うん」


ちょこちょこと理佐は寄って来ると、広げた私の腕の中にすっぽりと収まる。


私は理佐をギュッと抱きしめて、首筋に唇を寄せる。


「ね、ねる…?」
「私のって印付けたの」


キスマークを付けられたとわかると、 理佐はまた顔を真っ赤にする。





私の可愛い可愛いわんちゃん。



今日もまたいっぱい教えてあげるんだ



この子は絶対誰にもあげないんだから。





END.



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