おはなし。

□やきもち
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収録終わりの前野はどこか変だった、何かと問われれば言葉には出来ない事だだけど雰囲気がいつもと違った。きっと気付いているのは俺くらいだろうと思いながらゆっくりと近付いて前野の肩に触れてみた
ほら、俺の方見て気まずそうに笑った。俺、何かしたっけと考えながら強引に前野の腕を引っ張り現場を後にした
駐車場へと連れて行けば戸惑うように声をかけてきた


「たつ、何処行くの」
「俺の家だけど、いい?」
「ん、いいよ」


車の助手席に乗った前野との何気ないような会話にもどこか違和感があったように思えた、いつもと何かが違うと思いつつ車を出した


家に着いては無理矢理腕を引っ張って中へ入れては、玄関先で手首を扉へと押し付けては逃げれないように鍵を閉めた。それを不安がるように顔が強張った


「たつ、どうしたの…?」
「前野今日、俺とあんま話さなかったろ」


先延ばして話が長くなるのは良くねぇと思って単刀直入に聞けば目を泳がせて、やっぱり意識的に避けてたのかこいつと思えば手を掴む力が強まった



「別にそんなこと…は」
「そういうわりには誤魔化そうとしてんじゃねぇの?」
「誤魔化そうとしてねえ、し」
「はっきり言えよ、俺の何が悪かったんだよ」


ねちねちと話して肝心な所を話さない態度に思わず口調が強くなった、おそるおそると口を開く前野を見た


「…てる、とか」
「何?」
「お、お前が…カメラ目線で愛してるとか言うから」


ああなんだ、こいつはその事に妬いたのかと思えば安心したようにふっと身体の力が抜けながら優しく抱き寄せた


「前野ってほんと可愛いよな、妬いちゃってさ」
「なっ…可愛いとか、ちげぇし」
「はいはい、今からたっぷり甘やかしてやっから拗ねねぇの」
「…それなら許す」


ふにゃり、という言葉がぴったりと当てはまる様に笑顔を見せる前野は本当に可愛いと思う





(やきもち妬くとか可愛すぎる恋人だよ、まったく)

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