おはなし。
□まっすぐみつめて
1ページ/1ページ
ずっと見ていた、誰よりも前野さんを、ともにいだけを見ていたはずだったのに。僕の知らない間に恋する人へと変わっていた、たつにいじゃなくて僕じゃだめだったんだろうかと知った時から考えていた
「ともにいって、どうしてたつにいの事が好きなんですか?」
二人きりになり待っている間、何故、どうしてという思いが抑え切れなくなった。びっくりしたような不思議そうな顔で僕を見た
「いきなりどうしたの?」
「だって気になるじゃないですか、いつも喧嘩ばかりしているのに。好き同士なのは、何でだろうなあって」
自分で話してても分かるくらいに語尾が小さくなっていった、好きとか言いたくなかったけど聞きたいことはそういう事だと無理矢理言い聞かせた。ゆっくりと口を開くともにいを見た
「…あいつ、優しいんだよ。付き合ってる今も普段は前とは変わってないけど、ふたりっきりになると甘えたりさせてくれるんだよ。仕事であいつも疲れたりするくせに俺の事優先してくれて、そういう所かな」
あんまり話すとたつに怒られるからごめんな、と笑ったともにいは僕が見たことのない笑顔だった
(まっすぐみつめていたから分からなかった)
(ともにいもずっと、たつにいを見てたことを)