おはなし。

□たいせつ
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初めて見た時から好きだった、きっと。自覚してしまったから今はそう思えてしまうのだけれど、カッコいい人だなと思っていたんだ。
達もきっと俺の事が好きなんだろうな、って分かっていた。いつからか凄く目が合う、話す時の言葉遣いが変わった。表情も柔らかくなった、微笑んでくれた。
だけど話すつもりなんてなかった、好きだと言ってもいつまで続くのか終わりなんて来て欲しくなかった。それなら黙って思っていればいい、と思っていた。



「俺も、好きだから分かるんだよ〜…たつの事」


お酒の勢いでペラペラと話してしまった、言わなくていい様な思っていた事を。
いや違う、酔っていた事にしてそろそろ楽になりたかったのかもしれない。終わりが来てもいいから、一時的なものでもいいから夢が見たかったのか。





「おはよう、前野」
「お、おはよう…?」


翌日に目が覚めるとキッチンに立っているたつが俺を見て微笑んでいた。あれ、そういやたつって料理したんだっけ。


「飯、作ってるから少し待ってろ」
「何か、手伝おうか?」
「いーよ、昨日吐いたりしたんだからもうちょっと横になってろ」
「んー…」


告白の事、覚えてんのかな。忘れてて欲しいような覚えてて欲しいような、ぐるぐると頭の中を駆け回った。


「ほら、飯出来たから起きろ」
「ん、ありがと」


ゆっくり体起こせば机にご飯と焼き魚と味噌汁が置いてあり、驚きを隠せないままたつを見れば可笑しそうに笑いを堪えていた。


「ほら、いいからとっとと食え」
「…い、いただきます」


ぎこちなく手を合わせて料理に手をつけると美味しくて、新婚みたいだと吹き出してしまった。






(こんな日常が、ずっと続けば幸せなのに)
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