おはなし。

□なかま
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外に出たのはいいものの、前野の家へ送るとしても場所は知っていても鍵を何処に持ってるか分かんねぇし開けさせようとしても酔っぱらってるし…などと言い訳を心の中でつらつらと並べてはタクシーに乗り込めば自分の家の近くまで送ってもらう事にした

近くまで着けば代金を払って前野の腕を肩へと再び回させ降りては自宅までへと向かった。抱き寄せつつもふらつきながら歩いている前野へ声を掛けた


「前野、大丈夫か?」
「んーう…へえーき」
「うん、平気じゃねぇなお前」
「ちーがう…へーき、らもん」


呂律が回ってない口調で返してくる前野を見て笑いを堪えた、どう見ても大丈夫じゃないだろと突っ込みを入れたくもなった
と考えながら歩いていけば自宅へ着き、前野を支えながら靴を脱がせては部屋の中まで連れて行った


「ん、ぅ…」
「大丈夫か?」
「気分、悪い…吐きそ、う」
「ちょ、待て。トイレで吐けお前!」


慌ててトイレへと連れて行き思いっきり吐き出してはその後すっきりとした顔をしていた、満足そうにも見えて流石に不満に思う


「おい、何勝手にすっきりしてんだよ」
「んー…ごーめん」
「許す、てかとりあえず休めお前」


リビングまで前野を連れて行けば水を渡して優しく背中を擦った、これは自然にだろうかと下心は隠せているはず

渡した水をごくごくと飲み干せば飲み終わったコップを渡してきて目を瞬きさせた、眠そうだ



「なー、たーつ」
「なんだよ、ソファだと寝にくいか?」
「ちげぇ、し。眠く、なってきた…かも」
「へいへい、とっとと寝ろ」


ゆっくりとソファに寝かせれば眠たそうに目を擦り始めて、タオルケットをかけてやれば満足そうに微笑んだ。人の気も知らねぇで、と不満に思いながら前野を見たらまだ笑っていた


「たーつ、なーあー」
「なんだよ、とっとと寝ろっつったろ」
「んふふ、たつって俺の事好きだよね〜」
「は…」


息の仕方が分からなくなるとよく言うが、それが一番表現するには相応しい言葉だった。そんな混乱する俺に追い打ちかけるように前野が発した言葉


「俺も、好きだから分かるんだよ〜…たつの事」






(いや、意味が分からねぇ)
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