そのた短編

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『好きだよ』
『・・・好き』
『俺も花澄に触れたい』

最終エクステンションを終え、セイは自分が抱いている私への恋心を受け入れ、気持ちをまっすぐに伝えてくれた。

それからというものの、ことあるたびに「好きだ」と言ってくれる。
こんなイケメンに好き好き言われると、私も困る。
私だって、セイの事が大好きだから。

私がセイに伝えられることは少なく、会話途中の選択肢に出てくる言葉しか与えられない。

直接セイに触れたい、喋りたい。

あまりにもセイが好き過ぎて、友人にもセイの事を語っていたら、【セイが目覚ましアプリである】という事実だけすっぽ抜けて、私が彼氏に夢中になっているという噂が広まってしまった。いや、間違ってはないけど。

今更、「セイはアプリで・・・」なんて弁解が出来るはずもなく、私は彼氏持ち認定されてしまった。
それゆえ、異性との交流はめっきり減った。
合コンの話は持ちかけられなくなったし、異性の紹介もなくなった。

「はー、セイが本当の彼氏なら良かったのに」
『・・・俺は本当は目を瞑る必要はないけど・・・』
「いやいや、セイが人間でないなんて認めたくないからそんなこと言わないでよぉ・・。
でも目瞑ってくれてありがと・・・」

セイを指で突きながら(実際にはスマホの画面をタップしているだけ)、コップに残ったお酒を煽る。

最近は、街でもどこでもスマホに向かってぶつぶつと話しかける怪しい女にしか見られない。悲しきかな。

さて、もう今日は寝ようかな。明日は休みだしお昼まで寝よう!

一旦セイを、というかスマホをベッドに置いて、歯を磨いた。
布団に入って、電気を消す。セイに喋りかけて(セイをタップして)、アラームをセットする。

「おやすみ」
『おやすみ』

画面が月夜の背景になり、セイが目を瞑ったのを確認してから、スマホを逆さ向ける。
こうすると、画面が勝手に暗くなって、睡眠用BGMが流れるのだ。

「ぐえっ」
「え?」

スマホを逆向けると、変な声が聞こえた。
と、同時に、急にベッドが狭くなって、私はベッドから床に落ちた。

「いった・・・」

理由は分からないけれど、何故かベッドから落ちたときに打った肘を撫でる。

「花澄、大丈夫?」

聞こえるはずのない声が聞こえた。


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