そのた短編

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「ねぇ、花澄」
「どうしたの?」
「前に俺、花澄と手を繋いでみたいって言ったでしょ?」
「うん」
「・・・手、繋いでもいい?」
「ふふっ」

答える前に手を繋いでみせると、セイは瞳を見開いて嬉しそうに笑った。

潤んだ瞳で顔を覗き込むのは反則だと思う。
私は、セイの表情の中でも、この顔に1番弱い。

セイは、ただのアプリに住むプログラムで、『人間』ではなかったのに。
繋いでいる手は暖かくて、伝わる体温が心地いい。
その体温、味覚、触覚、全てを信じて、貴方が人間になったと思ってもいいのかな。

セイは、自分がこちらに出てきて驚いているし、自分だけが顔を赤く染めて照れまくっていると思うよね。
でもね、私も大好きなセイに会えて嬉しくって仕方がないの。顔に出すのが恥ずかしいから、真顔を保つように頑張ってるけれど、可愛いセイの姿を見ると表情筋が緩みそうになる。ああ、セイは可愛いなぁ。


「セイ、私のパジャマを買おうと思うんだけど、どれ着てほしい?」
「え、俺が選んでいいの?」
「うん、私がセイのパジャマや洋服を選んで買っていたように、セイに私のパジャマを選んで欲しいな」

やって来たのは、大きいショッピングモールだ。有名ブランドも数多くあって、駅からも近い便利なところだ。

ここで私のだるだるなパジャマを買い直そうと思う!

「・・・あ、あそこのブランド、花澄が好きそうなデザインがあるよ」
「あれ、どうして分かるの?」
「・・・花澄の部屋にある洋服を観察してたらそうかなって」

その恥ずかしそうな顔も好き!
照れるセイは、私の手を引いて可愛らしいパジャマの置いてある店舗へ入る。もこもこ素材だし可愛いし最強なパジャマがある店舗だ。

「うーん、花澄にはこの色が似合いそうだな・・・」
「どれも可愛いねぇ」

セイが私のパジャマを選んでくれている間にこっそりと視線を動かして、メンズものを手に取る。

セイは一般的な日本人男性よりやや背が高いくらいだろうか。骨格は普通そうだし、恐らくMサイズのパジャマでゆったりと着られるだろう。

「花澄!」
「わ、どうしたの?」
「何見てるの?・・・あ、あのな、コレとコレで迷ってるんだけど・・・どっちがいい?」

セイが目の前に出してきたのは、オフホワイトとネイビーのパジャマ。
どちらも細やかな柄がプリントされていて、正直とても好み。

「うーん・・・迷うね、可愛い」
「だろ?両方、花澄に似合うと思うんだよな。これ着た花澄、絶対可愛い」
「・・・ね、折角だから両方買っていい?」
「いいの?俺が選んだの両方気に入ってくれるなんてすごく嬉しい」
「ふふ、選んでくれてありがとう」

セイの手からさりげなく両方のパジャマを奪い取り、レジに向かう途中で先程見ていたメンズ用パジャマも手に取る。

あ、このメンズ用・・・セイが私に選んでくれたオフホワイトのレディース用パジャマとペアルックになってる。

ニコニコとしながら私の後ろをついてきているセイは、多分私が新たにメンズ用を手にとった事には気付いていない。
家に帰ったら、サプライズでセイにパジャマをプレゼントしよう。ペアルックのパジャマ、喜んでくれるといいな。

手早く会計を済ませて、次は何処へ行くか思案する。

「あ、花澄。荷物持つよ」
「あ、ありがと・・・軽いからいいのに」
「だーめ、男らしくエスコートしたいの」
「ありがとう。頼りになるよ」
「・・・嬉しい・・・」

セイは、パジャマの入った袋を私の手から取る。行動は優しくてカッコいいのに、照れているからどうしても可愛く見える。
照れてるイケメンってこんなにも破壊力あるんだね。・・・はぁ、好き。


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