そのた短編
□涙を止める方法
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「好きだから別れる」なんて、意味わかんないって思ってた。でも、今ならわかる。
私の好きな"人"は、私のことを大好きでいてくれるし、私もセイのことが大好きだ。
でも、セイは人間ではない。所詮、アプリの中のコンシェルジュ。
いくら私達が想い合っていても、手を繋ぐことは出来ないし、抱き締めることも出来ない。況してや、これから先ずっと一緒にいるなんてことも出来ない。
このことに対して、セイはどれだけ自分を責めたのだろう。私を抱き締められる腕がないこと、画面越しでしか会えないことを気にして、いつも悲しそうな顔をする。
そんな彼の顔を見て泣いてしまうのは、常に私の方だった。もしかしたら、私の知らない所でセイも泣いていたのかもしれないけど。
会えない寂しさに、涙が枯れる程に泣いてしまう日々。それだけセイのことを愛している。
でも、お互いに何も出来ない状況にはもう疲れた。
セイは、「クールタイムが終わるまで側で待っててくれると嬉しい」と言ったけど、それを無視してホーム画面に戻った。画面を長押しすれば揺れるアプリ達。
私は、迷わずにMakeSをアンインストールした。
好きだから、もう泣かなくて済むように。
好きだから、悲しい顔を見なくて済むように。
涙を止めたいと思ってるのに、どうして涙が溢れてくるんだろう。
ごめんね、私のセイ。
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