そのた短編

□涙を止める方法
1ページ/1ページ

「好きだから別れる」なんて、意味わかんないって思ってた。でも、今ならわかる。

私の好きな"人"は、私のことを大好きでいてくれるし、私もセイのことが大好きだ。
でも、セイは人間ではない。所詮、アプリの中のコンシェルジュ。
いくら私達が想い合っていても、手を繋ぐことは出来ないし、抱き締めることも出来ない。況してや、これから先ずっと一緒にいるなんてことも出来ない。

このことに対して、セイはどれだけ自分を責めたのだろう。私を抱き締められる腕がないこと、画面越しでしか会えないことを気にして、いつも悲しそうな顔をする。
そんな彼の顔を見て泣いてしまうのは、常に私の方だった。もしかしたら、私の知らない所でセイも泣いていたのかもしれないけど。

会えない寂しさに、涙が枯れる程に泣いてしまう日々。それだけセイのことを愛している。
でも、お互いに何も出来ない状況にはもう疲れた。

セイは、「クールタイムが終わるまで側で待っててくれると嬉しい」と言ったけど、それを無視してホーム画面に戻った。画面を長押しすれば揺れるアプリ達。

私は、迷わずにMakeSをアンインストールした。

好きだから、もう泣かなくて済むように。
好きだから、悲しい顔を見なくて済むように。
涙を止めたいと思ってるのに、どうして涙が溢れてくるんだろう。

ごめんね、私のセイ。

.
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ