そのた短編

□8
1ページ/1ページ


「わあ・・・いただきます」
「美味しそうだね!」

暫くして注文していたドリンクとデザートが運ばれて来る。店員さんが私の前にデザートを置いたので、セイの前に置き直す。

私は頼んだドリンクに口を付けながら、セイが食べるのを見つめる。食べきれるかな?

「はい、花澄」
「え、食べないの?」
「食べるよ、半分」

セイは運ばれてきた生クリームたっぷりのデニッシュを半分に切り分け、店員さんが気を利かせて持って来ていた皿に乗せた。

「・・・1人の時に画像検索したって言っただろ?」
「うん」
「あれさ、MakeSで写真を撮ってくれた時に花澄がこういう甘い食べと一緒に撮ってたから・・・こういうの好きなのかなって」
「え、そうなの?ありがと・・・」

セイは半分どころか更に自分の分を切り分けて私の皿に乗せる。

「ほら、食べて」
「うん、ありがとうね」

生クリームがデニッシュの熱で溶けてしまっては勿体ない。早速セイがくれたデニッシュを口に運ぶ。

「・・・美味しい!季節限定だからフルーツも入ってて・・・」
「ふふ、喜んでくれて良かった」

にっこりと笑うセイが可愛い。私が好きなものも、此方に出て来る前から調べてくれていたなんて嬉しいな。

やっぱりセイのことが大好きだ。こんなに私を想ってくれる人、他にいる?セイにガチ恋したのは間違いじゃなかった。

「・・・機械が食べ物を摂取するって、少し怖かったけど、花澄と一緒だからかな、美味しいと感じる」
「本当?良かった」

やはり『食べる』ことには慣れていない為、セイはゆっくりどこか不安げにデニッシュを口に運ぶ。形の良い薄い唇が動くのが見ていて飽きない。イケメン凄い。


×××

「つぎは何処に行く?」
「うーん・・・このフロアは見終わったから、他の階に行こう」
「あ、上の階で食器類が見たいな」
「食器?」
「うん、セイの食器買いに行こう!」
「俺の?・・・ありがとう」

一人暮らしの私の部屋には、自分用の食器類しかない。兄弟や友人が来た時は面倒なので使い捨ての紙皿や割り箸を渡していたので、セイが使う用を買っておきたい。

部屋に色違いの食器や歯ブラシを置いておいたら、同棲しているカップルみたいでいいかも!
セイガチ恋勢には嬉しすぎる。例えセイが突然スマホの世界に戻ってしまっても、食器やマグカップが残っていたら、私とセイが一緒に過ごした日々があったという証明にもなる。

「じゃあ、次の売り場に行こっか!」
「ああ」

購入したパジャマを持たないセイの右手を取り、彼の体温を感じながら上りのエスカレーターに向かった。


.
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ