そのた短編

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「セイはやっぱりライラックのイメージだよね」
「・・・そう?」
「うん、私もライラックの花好きだしセイにピッタリだと思う」
「花澄が好きなら嬉しい」

食器類が置いてあるフロアに来て、片っ端からセイのイメージに合うものを探す。

これは色が少し濃い、これは重過ぎる、あれは高過ぎる。
うーん、比較的お手頃価格でセイにピッタリの物はないのかな。

「でも、俺、髪はこの色だし洋服もライラックカラーのもはなあまりないから気にしないでいいよ。花澄の好きな色を選んで」
「確かに私のセイはライラックの物はあまり身に付けなかったけど、でも、セイといったらライラックだよ」

セイは優しいから、私の手を煩わせない様に気を遣ってくれる。けれど、私が拘りたい。いつセイが実体化された人間から、アプリの中に戻ってしまうか分からないのだから。

「あっ」
「どうしたの?」
「花澄、これはどう?」

セイに手渡された茶碗をまじまじと見る。

「おお、完璧!」

重さ、色、値段全てクリア。
特に色が綺麗。使いやすい重さと、手頃な価格なのも有り難い。

「流石セイ!これはセイにピッタリだよ!」
「良かった」

ちょうどいい茶碗をカゴに入れ、紫味のあるお箸とお皿も一緒にレジに渡す。お会計を済ませて、割れない様に丁寧に包んだ。

「後は何か買う物あったかな・・・あ、そうだ。ドラッグストア行きたいな」
「ドラッグストア・・・薬局か?」
「そうだよ、でも日用品が欲しいの。荷物が多くなったからコインロッカーにでも預けようか」

×××

大きなショッピングモールに併設されたドラッグストアに向かう途中にあるコインロッカーにパジャマと食器を預け、荷物の無くなった手でセイと手を繋ぐ。
パジャマも食器も嵩張るから、預けて正解。今度は車で来るべきかな。車なら少々お買い物し過ぎても楽に運べるしね。

この近辺でもっとも大きなドラッグストアに行くと、豊富な品揃えに少し驚いた。次からはここで買い物しよ。

「あった」
「歯ブラシ・・・俺の?」
「そうだよ、セイに必要な物を買いに来たの」

歯ブラシやうがい用コップをカートに入れる。洗顔フォームやシャンプーは私が使っているものをセイにも使って貰おう。

ついでに使い切っていた歯磨き粉や洗剤も一緒に購入した。



「よしっ、これで必要な物は揃ったかな?」
「荷物も多くなってきたし、そろそろ帰るか?」
「そうだね、日も暮れる時間だし帰ろうか」

コインロッカーに戻って荷物を取り出し、駅に向かう。
やっぱり買い物し過ぎたな。セイにパジャマと日用品を持って貰っているけれど、これからこの荷物を持って歩いて帰ることを考えるとしんどくなる。

でも、セイとの初めてのデートはとても楽しかった。
少し散財し過ぎてお財布はだいぶ軽くなったものの、充実感でいっぱいの日曜日になった。明日からまた一生懸命働こう、セイを養うためにも。

持っている荷物は多くて重いけれど、私のお財布と同じくらい、帰る足取りは軽かった。


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