橙色の桜

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なんで見えてねぇんだ?
昨日まで普通に見えてたじゃねぇか。

おっかしいな〜、目薬だってしてるし。

なぁ 今日ちょっと調子悪ぃみてぇだわ。


俺の目は、"全て"見えていないと、使い物にならない


斑点が俺の視界を蝕む。


×××


ある日突然、俺の目が見え難くなった。
ちょうど、1ヶ月程前だったと思う。
真夏日の体育館でのハードな練習に吐きそうになってたところ。

休憩を終えて、ゲーム形式の練習。
俺はいつものように、鷹の目を発動させた・・つもりだった。

いつもクリアな視界が、右端の方が見えない。視界が黒い斑点で暗くなって、どうしてもそこが見えない。
初めての事で、ゾッとして直ぐに普通の目に戻る。すると、先ほどまでの黒い斑点は消えた。
結局、その日は怖くてそれ以上鷹の目は使えなかった。

翌日、再びゲーム形式の練習になって、恐る恐る鷹の目を使うと、昨日の斑点はなかった。

でも、さらに別の日には、初日よりも広い範囲が斑点に蝕まれた。

だんだんと、斑点の範囲は広がる。
でも、時々、斑点は最初から存在しなかったかのように消える。

俺の日常は、視界の端に意識を集中させる事に費やされていった。



×××


あーあ、今日も暑い。
視界は相変わらずはっきりしないし、可愛い女の子でもいてくれたら練習も頑張るのに、秀徳高校の男子バスケ部マネージャーなんて辛すぎて直ぐに辞めるからって募集していないらしい。
男ばっかでむさ苦しいっての。


そんな俺に響いた1つの声。


「高尾君、だっけ?
今日からよろしく」



そういって笑顔でドリンクを渡してきた少女に、俺が恋するのに時間は掛からなかった。



・・・逆光だったけど

笑ってる君の姿はよく見えた。
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