あるけみすと短編

□美少女探し
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「図書館にいつもいる美少女?」
「そう、黒髪の」
「何年の子?」
「同い年かな」
「誰だろう・・・」

私の前の席で、椅子に反対向きに座って私と向かい合っている金髪タレ目のイケメンは田山花袋だ。

「でもさ、毎日いるんだよ。黒髪の美少女」
「わかんないよ」
「は〜あ、あの美少女とお近付きになりたい」

イケメンで、人懐っこく、いつも明るい彼にどうして彼女がいないのかと言うと。
美少女に目がないからだろう。

校内の美少女は大体名前やクラス等を把握していると思うが、よりにもよって図書館に毎日現れる美少女について知らないとは意外だ。花袋が知らない美少女なんていたっけ?

「気になるなら、次見かけたときに声掛けてみなよ」
「はあ!?無理無理!美少女には大抵彼氏がいる訳!」
「いないかもしれないじゃん」
「いるって!・・・てか鞘師は彼氏いるわけ?」
「いないよ」
「あ、そう・・・。でも、可愛い子には大抵イケメンの彼氏がいるんだって!」

うだうだ悩まずに、先ずは声を掛けてみるのがいいと思うけれど、彼は違うらしい。頭を抱えて唸っている。奥手だなぁ。花袋の友達の国木田くんや島崎くんなら直ぐにでも声を掛けて相手のことを知り尽くすだろうに。

「はぁ、分かった。
今日の放課後、一緒に図書館に行こう。その子のこと、私が知ってるって可能性もあるし」
「マジ?サンキュー!」

花袋は嬉しそうに言う。散歩前のわんちゃんみたい。しば犬かな。
彼がもし本当に犬ならば、今しっぽをぶんぶん振っているだろう。

放課後の約束をすると、花袋は自分の席に帰っていった。そして、そのまま私の前の席には、この席の本来の主である徳田くんが座った。彼は呆れ顔だ。
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