あるけみすと短編
□媚薬の恋
1ページ/3ページ
こちらの作品は、R18です。
苦手な方はご注意ください。
単品でも読めますが、【血塗れのキス】こちらの続編になります。
図書館のかっこいい志賀直哉はいません。
没日会の吸血鬼さんです。
×××
「やっと消えてきたみたい・・・」
水菜は、全身鏡の前に立って自分の姿を確認する。
彼女の鎖骨には、4つの点の傷痕がある。
「・・・血を吸われてイくなんて」
あの日の光景を思い出すだけで全身を一瞬駆け巡る快感。
歯を立てられた鎖骨に付いた痕は、あの日から1ヶ月以上経って漸く目立たないようになってきた。
突然、目を疑うようなイケメンに声をかけられ、
しかもその初対面の男を自ら自宅に上げ、手料理を振舞われるだけでも現実離れし過ぎている。
その上、食事の後には強引にディープキスされたかと思うと鎖骨に歯を立てられ、血を吸われた。
注射は大の苦手なのに、あの男の吸血は気持ちよく、それだけで達してしまった。
信じられない出来事は、誰にも打ち明けられずに己の中で仕舞い込む。
忘れたくても、夢だと思いたくても、鎖骨に残る痕が、あの日の出来事を実際にあったものだと突きつける。
水菜は、あの日から避けていた鎖骨の見える服を手にとり、着替える。
「・・・よし、これならわからないね」
鏡で念入りに自分の姿を確認して、鏡の前で笑顔を作ってみせる。
今日も穏やかに過ごせますように。
そう願って、お気に入りの香水をつけた。
「いってきます」
誰もいない部屋に向かって声を掛け、家を出る。
定時で上がろう。そう思って、出社するのだった。