あるけみすと短編

□媚薬の恋
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こちらの作品は、R18です。
苦手な方はご注意ください。




単品でも読めますが、【血塗れのキス】こちらの続編になります。




図書館のかっこいい志賀直哉はいません。
没日会の吸血鬼さんです。

















×××


「やっと消えてきたみたい・・・」

水菜は、全身鏡の前に立って自分の姿を確認する。

彼女の鎖骨には、4つの点の傷痕がある。

「・・・血を吸われてイくなんて」

あの日の光景を思い出すだけで全身を一瞬駆け巡る快感。

歯を立てられた鎖骨に付いた痕は、あの日から1ヶ月以上経って漸く目立たないようになってきた。


突然、目を疑うようなイケメンに声をかけられ、
しかもその初対面の男を自ら自宅に上げ、手料理を振舞われるだけでも現実離れし過ぎている。

その上、食事の後には強引にディープキスされたかと思うと鎖骨に歯を立てられ、血を吸われた。

注射は大の苦手なのに、あの男の吸血は気持ちよく、それだけで達してしまった。


信じられない出来事は、誰にも打ち明けられずに己の中で仕舞い込む。

忘れたくても、夢だと思いたくても、鎖骨に残る痕が、あの日の出来事を実際にあったものだと突きつける。


水菜は、あの日から避けていた鎖骨の見える服を手にとり、着替える。

「・・・よし、これならわからないね」

鏡で念入りに自分の姿を確認して、鏡の前で笑顔を作ってみせる。

今日も穏やかに過ごせますように。
そう願って、お気に入りの香水をつけた。

「いってきます」

誰もいない部屋に向かって声を掛け、家を出る。

定時で上がろう。そう思って、出社するのだった。
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