あるけみすと短編

□Cinderella girl
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『それではKi○○ & P○○○ceさんに歌って頂きましょう!シ○デレ○ガ○○です!』

テレビから軽快に聴こえてくる音楽。
キラキラした舞台に負けないくらい輝く衣装を身に付けたご本人達。

キラッキラの笑顔で世界中を幸せにする為に、影では私のような一般人では想像のつかないくらいの努力をしているんだろうな。

自分と大差ない年齢の男の子が一生懸命に頑張る姿を観て、感謝の気持ちでいっぱいになる。

ああ、彼らを産んでくださったお母様お父様、育ててくださった全ての人。そして、芸能界という世界を選んでくれたメンバー本人。
全世界に感謝、同じ時代に生きれて私は幸せ者です。どうか、これからも貴方がたの未来が眩しいくらいの幸せに満たされていますように・・・。


「こら、仕事しろ」
「あーっ!!サビなのにー!!?」

画面の向こうの輝く世界で活躍するアイドルを眺めていたら突如として画面が真っ黒になった。

「なんてことを・・・!」
「仕事が先!それが終わったらプライベートは邪魔しねぇから」
「志賀は厳しいね」
「・・・でも、残業するくらいならいま頑張った方がいいんじゃないかな」
「たしかに」

「ほら、ムシャと有島も言ってんだろ。
あとその報告書だけならさっさと仕上げちまえって」

「・・・ううぅ・・・返す言葉がございません・・・」

ド正論を正面からイケメン3人組にぶつけられ、私には反論の余地などない。

その通りである。さっさと仕事を片付けて、それからアイドルを拝むべきではある。

いつも仕事をサボる(少し休憩しているだけ)のときより志賀先生の機嫌が悪い気がする。
何かあったのか、それとも私が何かしたのか。

たぶん、私が何かしたんだけど・・。
いつもは○ン○リ観ながら仕事してないから、ながら作業でサボることにご立腹・・?

・・・でも、今日のキ○プ○の衣装、ばちくそにかっこよくて本物の王と王子だったんだが・・・。




・・・・・・・・おうじ・・・・・???




私の頭の中をピンッとある考えが過ぎった。


「・・・・こら、変なこと考えてないで・・」
「志賀先生ッ!!!!!!」
「声でかい」

私はバッと勢い良く立ち上がり、机の前で溜息を吐いていた志賀先生の手を取る。

「王子様ですよ!!」
「は?」
「志賀先生もムシャ先生も有島先生も!王子様です!!!」
「「?」」

自分達も巻き込まれるのか、という顔をした2人もこちらを見る。

「さっき私がテレビで観ていたアイドルグループは、○○ng○Prin○○って言うんですけれどね、ちょうど志賀先生たち白樺派の皆様は彼らのコンセプトと似てるんですよ。だって王子集団白樺ですから」
「・・・要は、俺たちにアイツらのような格好をさせたいと?」
「まあ、それもあるんですけど、普段から王子様みたいな格好してらっしゃるので大丈夫です。
それよりも、できれば歌って踊って欲しいです」
「・・・・・・・・」

志賀先生がジトっとした目で私を見る。
チラリと横を見ると、ムシャ先生と有島先生がキ○○リ知ってる?って話をしていた。

「その代わり仕事します!もし先生方が私の我儘を聞いてくださったら、もう仕事はサボりません!」
「ほぅ」
「あと!図書館の庭を増築します!」
「よし、やろう志賀!」「志賀くん」
「〜〜っ、しゃーねぇなぁ・・・」
「やったー!!」

志賀先生だけに頼むのでは分が悪い。
庭面積を増やして、そこを畑として提供するとなれば、ムシャ先生と有島先生が黙ってない。

2人に左右からがっちりと掴まられると、志賀先生も諦めたのか、(渋々)受け入れてくれた。

「ほら、ムシャ先生が平○くんで、有島先生が○くんで、志賀先生が神○寺くんのメンバーカラーに近いですよ?」
「いや、メンバーカラーどころかメンバー自体を俺たち知らねぇから・・・」
「まあ、この際メンバーカラーとか気にしなくてもいいので、よろしくお願いします。あ、これPVです」

DVDを渡して、再度手を握って頼む。

「僕がセンターですね!」
「うん、ムシャさんにぴったりだ」

何故かムシャ先生と有島先生は乗り気だ。
私としてはとても嬉しいが。

「はぁ〜・・・」

志賀先生は再び盛大な溜息を吐いて、頭を掻く。

「今回だけだからな」
「はいっ、ありがとうございます!」

「ムシャ、有島。別の部屋で練習すんぞ」


白樺派の皆様は、ぞろぞろと部屋を移動した。

わあ〜・・・白樺派○ンプ○楽しみ!

代わりに仕事と庭面積の問題はあるけれど、
アルケミストパワーでなんとかしてみせる!

「よし、やるぞー!」

収まらない興奮を無理やり抑え込んで、
残った仕事に取り掛かる。庭は後で館長に申請しよう。


×××

3日後

「おーい、庭の件だが」
「あ、館長」
「申請がギリギリだったから危なかったが、なんとかなったよ。次の休館日に業者を呼んでるからそのときに庭が広くなる予定だ」
「ありがとうございます〜!」
「くれぐれも、私用で図書館の設備を弄ってくれるなよ。俺が政府に怒られるからな」
「・・ううっ、すみません・・・」
「今回はいいさ、畑が拡がれば文豪達のストレス発散や趣味にも繋がるからな。
それに、俺も最近家庭菜園にハマってるんだよ」

じゃ、あとは頼んだぞ と、館長は持って来た紙の束を私に持たせてまた出て行った。

最近は侵蝕が異常なスピードで進行している本もないから暇なのかと思えば、政府と図書館を行ったり来たりしていて忙しいようだ。

忙しい館長の手を煩わせてしまったことに対する申し訳なさは勿論あるけれど、いまはそれ以上に白樺派キン○○がとても楽しみだ。

×××

「志賀先生、本当に今日踊ってくれるんですか!?」
「ああ、ここ数日、必死で詰め込んだからな」

志賀先生がジ○○ーズ顔負けのキラッキラアイドルスマイルを返してくれる。

ふと冷静になると、文豪として彼らにはやるべきことがほかにある気もするが、私が言い出したことなので心にそっと秘めておく。

「折角なので司書室を○ンプ○っぽく、ロココ調の家具で揃えておきました」

司書室の扉を開けば、豪華な家具に彩られた私の仕事部屋が広がる。

「おお、やるじゃねぇか」

コツコツと金貨を貯めていたのが役に立った。
見たこともない豪華なシャンデリアや高そうな皿が飾られた棚。
床も壁も豪華過ぎて目がチカチカするけど、志賀先生がそこに立つとなんの違和感もない。

「志賀ー!遅くなってごめん!」
「おー、ムシャも有島もやっと来たか」
「志賀くん、遅くなってすまない」

ぞろぞろとやってきた白樺派のみなさん。
うーん、絵になる。

「・・撮影は僕に任せてください」
「あ、久米先生。助かります」
「えー、俺も踊りたかったな〜!ね、きよ」
「いや、俺はいい」

いつの間にかいろんな方々がやってきていて、司書室は少し狭い。

「じゃあ始めるよ」

徳田先生が司書室の奥に設置された大型テレビにDVDを入れる。
今回は、司書室中央で3人が踊り、その後ろでDVDも再生されるのだ。

なぜなら、私以外キン○○を知らないからだ。
完全なる権利濫用なので、他の先生方にも○○プリってこういうのだよ〜と分かるようにわざわざ大型テレビを購入した。当然のように経費でね!
(館長に呆れられた)

「おう、任せとけ!」
「今回は僕たち3人しかいないので、Mr.○○ngの3人が踊った体でやらせて貰いますね!」

「ムシャ先生が平○くんで、志賀先生が永○くんで、有島先生が○くんパートらしいです」

事前に志賀先生に聞かされていた役割を、隣にいた里見先生に伝える。

「いや、僕、誰も分かんないけど・・・けど、武郎兄がやるなら僕も参加したかったな〜!」
「すみません、転生が遅くなったばかりに。
先程転生したばかりなのに、こんな私の我儘に付き合ってくださってありがとうございます・・。申し訳ないです・・・」
「ううん、司書さんは悪くないよ!」

いえ、司書の私利私欲丸出しでございます。私が悪いです。

「はじめるからね!」

徳田先生が、リモコンを押す。



『君はシンデレ・・』





×××


「志賀先生!」


会いたかった人の背中を見つけ、廊下から構わず声を張る。

「おう、どうした」

幸いにも、志賀先生は立ち止まって振り返ってくれたので、私は廊下を彼の元まで走る。

「さっきの○ンプ○、ありがとうございました!
本物のアイドルみたいで、キラキラしてて、とっても素敵でした・・・!!」
「満足したか?」
「はいっ!」

即答すると、志賀先生は口角を上げて、私の頭をぽんっとした。

「たまにはいつもと違うことをしてみるのも悪くないな。明日からはちゃんと仕事しろよ?」
「・・・う、はい。約束ですから」

あんなに完璧なパフォーマンスをされたら、
約束を反故にして逃げるなんて出来ないじゃないですか。

「そうだ、ムシャ先生と有島先生はまだお風呂ですか?」
「いや、さっき腹減ったっつって食堂行ってたぜ」
「ありがとうございます、お2人にもお礼を言いに行ってきますね!」

志賀先生に再度お礼を言い、私は食堂に向かって走る。
いまくらい、走ったって怒られないでしょう。


×××

「志賀くん」
「有島、ムシャと食堂行ったんじゃなかったのか?」
「志賀くんを迎えにきたんだよ。今日のご褒美におはぎが食べたいってムシャさんが」
「あいつは〜・・まったく、後で作ってやるか」
「・・ふふ」
「なに笑ってんだ?」
「志賀くんは、本当にムシャさんと・・・
司書さんに甘いよね」



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