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□*おはようもおやすみも君の側で
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三分待ってください、そういって私は全力で部屋を片付けた。

とりあえず散乱している書類をまとめて、ぼさぼさだった髪に櫛を通して、お湯を沸かしてから百さんを部屋に招き入れた。


「ごめんね!体調悪いのに押し掛けちゃって!」

「い、いえ、こちらこそ、本日は本当に本当に申し訳ありませんでした!!」

「大丈夫だよ、俺もユキも名無しさんちゃんのこと怒ってないし!あ、おかりんもね!?それより、ちゃんと寝なかったのは怒ってるけど」


コーヒーを入れて私は百さんと向かい合って座る。
もう一度ごめんなさいというと、百さんにもうそれは無し!と釘をさされてしまった。


「それより、名無しさんちゃんの部屋ってすごく女の子っぽいんだね!」

「え、あ、散らかっててすみません!」

「そんなことないよっ!それに名無しさんちゃんも髪卸してて雰囲気違うし……」


なんだか恥ずかしくなってしまい、私は目を逸らす。


「あ、ケーキ買ってきたんだ!最近お気に入りのところがあって、マネ子ちゃんが教えてくれてさ!!」


ずきっ、あ、ほらまた痛んだ。

心配してきてくれて嬉しかったのに、いっきに気持ちが沈む。

大好きなケーキと聞いてテンションが上がったが、紡さんの話を聞いて一遍する。


「マネ子ちゃん美味しいところたくさん知っててさ!名無しさんちゃんも今度一緒に……」

「百さんは、紡さんが好きなんですか?」


明るくしゃべっていた百さんが黙る。

その目は大きく開かれて目をぱちくりさせている。図星、なのか……。


「そうですよね!ほら!いつも百さん紡さんのことご飯誘うし、紡さんは可愛くてふわふわしてて仕事もできて、素敵な女性ですもんね!!お似合い、だとおもいます!」


なるべく笑って、普通に、普通に。

胸の痛みは大きくなるばかり、だけど私は必至に笑顔で取り繕う。


「ねぇ、名無しさんちゃん……」

百さんの続きの言葉を聞きたくなくて私は飲み干したカップを片付けるふりをして背中を向けた。

「私、応援します!!ほら事務所としては反対しなきゃいけないんだろうけど、私は百さんの味方ですから!!なにかあったら相談してく……」


突然、背中に重みを感じて私は口を噤む。

百さんに、抱きしめられてる?


「百さん……っ!」

「こうでもしないと俺の話聞いてくれなさそうだったから」

「だけど……」


抱きしめる力が強くなって、私は心臓が爆発しそうだ。


「まず、マネ子ちゃんのことだけど。好きとかじゃないんだよ。ほらこの業界はさ、マネージャー同士でしか分からないこともたくさんあるし、マネ子ちゃんなら名無しさんちゃんと年齢も近いからそしたら名無しさんちゃんも相談する相手が増えるしね。だからそういうのじゃないんだ」

「そ、うなんですか……?」

「名無しさんちゃんは、何でそのことが気になったの?」

「え!?」

「ねぇ、俺、期待してもいい?」


腕が緩んだから私は百さんの腕から逃げ出して彼に向き合う。すると、今度は正面から思いっきり抱きしめられてしまった。


「百さん!?」

「嫌なら言って……だけどもし嫌じゃないならこのまま……」
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