*人魚姫の涙の意味は……*
□八章《人魚姫の様な勇気》
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「柚葉ちゃんのそんなところ初めて見た!へー、調理器具とか好きなんださすがパティシェさんだね!!」
『そ、そんな!それよりちゃんと挨拶もせずごめんなさいっ!!』
「気にしなくて大丈夫だよ、モモからいつも柚葉ちゃんの話はきい……」
「あーーーー!!モモちゃんお腹すいたなー、料理冷めちゃうし早く食べようよ!!」
百さんは私が着けたままの被っていた帽子とサングラス、ジャケットを取って椅子まで強引に案内される。
なんだろう、千さんの言うことを遮るなんて百さんらしくないな……それに千さんはすごく笑ってるし……。
「それにしても今日職場で見て思ったけど、柚葉ちゃん本当に綺麗だね。そこらへんのモデルさんより綺麗なんじゃない?」
こうやって近くで見ると千さん本当に王子様みたいだ。
綺麗な髪に整った顔立ち、そんな顔でそんなこと言われて俯いてしまわない人はいないだろう。
返答に困っていれば、百さんが千さんの料理を取り分けてくれたらしい。
野菜中心の見た目も綺麗な料理たちはすごくヘルシーで美味しそうで、隣にいる百さんに美味しそうですねとスマホを見せようとしたが、すでに彼はローストビーフを美味しそうに頬張っているところだった。
「こらモモ、ゆっくり食べないと身体に良くないよ」
もごもごしていた百さんだが、ごっくんと聞こえるように飲み込むと「だって美味しいんだもん!!ユキの料理大好き!」
やっぱり千さんの前だと百さんはなんだか少しだけ子どもっぽく見える。
二人でいるときはすごくしっかりしていて、こう大人の余裕がある彼だけど千さんの前では無邪気な子どもみたいでこれもきっと百さんの素なんだろうなって思う。
こんな百さんの表情を近くで毎日見れたら幸せなんだろうななんて思ってしまうあたり、私も諦めが悪い。
「どう? お口に合ったなら嬉しいんだけど」
『めちゃくちゃ美味しいです、このソースどうやって作ってるんですか?』
「あぁそれはね、エリンギをバターでじっくりとソテーしてから……」
本当に料理が好きなんだな、千さんの説明は詳しくてわかりやすくてすごくためになった。
今度作ってみょうかななんて思えるほど千さんの料理は本当に美味しくて、私はさっきまで抱えていた暗い気持ちが全部無くなっていくようだった。
「むむむ……」
『どうしたんですか百さん、難しい顔をして』
「いや、ユキと柚葉ちゃん楽しそうだなぁって」
「ヤキモチ妬いてるモモも可愛いけれどそれは柚葉ちゃんに?それとも、僕に?」
「ユキ!!!!!」
??
百さんが千さんに? 私にじゃなくて?
何で百さんが私にではなく千さんにヤキモチを妬くのかは分からないが、なんだか百さんの顔は赤くなっているように見える。
そ、そんな私と千さんが仲良くしているのは嫌だったんだろうか……どうしょう、嫌われたかな……
そうだよね、百さんは千さんが大好きなんだもん、なのに私が楽しそうにお話していたら嫌だよね……
「って、なんで泣きそうな顔してるの柚葉ちゃん!?え、モモちゃんなんかした!?ユキ!!」
「何で僕が言われるのか全く分からないんだけど」
『あ、いえ、何でもないので気にしないでください』
咄嗟にそう打って画面を見せれば百さんは納得いかないようにこっちをじっと見てくる。
そ、そんなに見られたら恥ずかしい……
「なんかあったら俺に相談してね!!柚葉ちゃん泣かせる奴は俺が絶対に許さないから!!」
「きゃー、モモかっこいー」
「茶化さないでよ!真剣に言ってるんだから!」
『ありがとうございます』
百さんは良い子!といって私の頭を少しだけ優しく撫でてくれた。