*人魚姫の涙の意味は……*

□十一章《風邪の特効薬》
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「今戻りましたー!!!」

「お疲れ様です、本日の仕事が終わったので報告に来ました……あ、すみませんお客様がいらっしゃっていたんですね」

「あ!!柚葉さん!!」


扉を入ってきた二人のうち赤い髪が私の視界いっぱいになる、以前水族館に百さんと行ったときに会った陸君だった。

やっぱりここはIDOLiSH7の事務所らしい。
さっきの人もアイドル、なのかな? それよりは事務員さんみたいだったな服装が。

ついつい考え込んでしまった私は慌てて陸君に久しぶりとスマホに入力した。

陸君と一緒にいるのは和泉一織君だ。
会うのは初めてだけれど実際見てみると高校生徒は思えない雰囲気があってつい敬語で初めましてと挨拶した。


「あぁ、以前兄さんと七瀬さんが水族館で出会った百さんの知り合いの方ですよね、初めまして。和泉一織と言います、確か冬平柚葉さんですよね?」

「でもうちの事務所になんで? もしかしてスカウトされちゃったとか!?」

『違う違う笑、具合が悪くてふらっとしたところをここの人に助けてもらったの』

「え、大丈夫!?まだどっか悪い!?水もってこようか!?」

「七瀬さん落ち着いてください、ほら言ってる側から大神さんが飲み物をもってきましたよ」

「あ、陸君に一織君お疲れ様!彼女と知り合いなの?」

「以前三月と水族館に行ったときにたまたま会ったんです。百さんの彼女ですよね!?」


その場のみんなの頭の上に大きなビックリマークが出ただろうその発言に私はつい大神さんと呼ばれた彼から受け取ったカップを落としそうになった。

必死に顔が赤くなるのを堪えようとしている間に一織君が「あなたは何を言って……そういうのはそうだとしても口にしてはいけませんよ!!」と怒っている。


「へぇー、百君の」


大神さんはまじまじと私を見ていて、それが余計に心臓に悪い。
あの人とは全く違う人なのに優しく笑った表情が彼にそっくりでそのたびに私の胸が高鳴ってしまう。


『違います、私なんて百さんの彼女じゃありません。あの時はちょっと……』


なんていえばいいか分からずついスマホの文字が止まる、その文字を入力していることとその私の態度を察したのか、大神さんと呼ばれた方は私をまっすぐに見て、笑った。


「私なんて……とかいうと持ったないですよ、こんなに綺麗なんですから」


え、この人アイドルなの?こんなに事務員さんみたいなのに、だってこんなイケメンな事務員さんなんている!?


「万理さんかっこいいー!!!!」

「た、確かにあんなイケメンな事務員はうちくらいにしかいないですね……」

「はははっ、そりゃどーも! それで俺にも名前教えてもらっていいかな?」
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