*人魚姫の涙の意味は……*
□十一章《風邪の特効薬》
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『あ、申し遅れました! 冬平柚葉と言います、この度は本当にありがとうございました、紅茶美味しいですすごく!!』
「柚葉ちゃんね、こちらこそ初めまして!大神万理って言います、この小鳥遊事務所の事務員さんです」
『事務員なんですか!?』
「はい、事務員です」
こ、こんなにイケメンなのに……やっぱり芸能事務所ってすごい。
「それで聞いている感じだと百君の知り合い……になるのかな?」
『ま、まぁ……』
ついつい決まずくて言葉を逸らしてしまう。
なにかぼろを出してしまう前に早く帰ろう、そう決めた私はスマホを打って彼らに見せた。
『紅茶ご馳走様でした。そろそろ行きます、お邪魔しました』
「待って、俺この後オフなんですよ、だから送らせてください」
『だ、大丈夫です!そんなご迷惑かけられません』
「いえ、まだ顔色も良くないですし、大神さんに送っていただいたほうがいいと思います」
「そうだよ!万理さんすごく運転うまいし!」
困っていれば万理さんはとっくにここを出る準備を終わらせたらしく立てる?といって私に手を差しのべてきた。
ここまでくると断るのも悪い、そう思い私はその手を取って陸君と一織君にお礼の代わりに軽く会釈して小鳥遊事務所を後にした。
「あ、百さんに連絡しておこう!確か今日午後はお休みって言っていたし」
「そうですね、それにしても綺麗な方でしたね」
「だろ!?本当に人魚姫みたいだったでしょ?」
「何であなたが得意げなんですか……でも確かに、モデルさんとかなんですかね」
「ここで大丈夫ですか?」
『はい、本当にありがとうございました』
「いえいえ、それにしても百君も隅に置けないなぁ」
『わ、私と百さんは何の関係もありませんので!!どうか知り合いということはあまり周りには……』
「もしかして、百君がアイドルって立場なことを気にしてる?」
う、図星だ……大神さん本当に鋭い……。
でも百君って、もしかして知り合いなのかな?
やっぱり芸能関係者だからかな……。
「確かに彼らはアイドルで、たくさんのファンの方に応援される存在で恋愛なんて御法度ってイメージがあるけれど、彼らも同じ人間で感情があって、俺は恋をすることがあっても良いと思うんだ。特に百君はついつい一人で抱え込んじゃうしね、だれか甘えられる人が居ればいいんだけど」
『あの、大神さんと百さんはお知り合いなんですか?』
そう聞くと彼は少し「んー」と言って考えこんでしまった。
え、聞いたらまずかったのだろうか、だけど考え込む彼は少しだけ子どもっぽくてちょっとかわいかった。
「しいていうなら一緒に居られなくなったそれはもうすごく手がかかる猫を拾ってくれたすごく優しい子、かな?」
ど、どういう関係なんだろう一体。
「身体冷やすといけないからそろそろ部屋に入ったほうがいいよ。もし何か百君のことで困ったこととか悩みがあったら連絡頂戴」
彼はそういって名刺を渡してくれた。
差し出した名刺を受け取ると、彼は先に外に出てドアを開けて私の手を取ってくれた。
……なんだか一緒にいるとほっとするし、こういう一つ一つの仕草を見るだけで少し心が温かくなった気がした。
「それじゃあお大事に……」
「柚葉!!!」