*人魚姫の涙の意味は……*
□五章《無邪気な君の笑顔に魅せられて》
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「うわっ、これすっごく美味しいですよ柚葉さんっ」
「本当だ!すっげーうまい!!どうやって作ってるんだろこれ!!」
『それならよかったです。大したレシピじゃありませんがよろしければ後で教えますよっ』
「本当ですか!? やった!これ絶対一織が好きなんだよなぁ」
「うわっ、これも美味しい!百さんこれ美味しいですよっ!」
私の持ってきたお弁当を陸君と三月君がおいしいおいしいと絶賛してくれる中、何故か百さんだけは黙ったままだった。
陸君に声をかけられ、まるで心ここにあらずな返答をする百さんはなんだか百さんらしくなかった。
もしかして、お口に合わなかったのかな……。
頑張って作ったつもりだったけど……だけど私がお口に合いませんかときいたところで彼は気を使って美味しいといってくれるだろうし。
「百さん大丈夫ですか?」
「あ、えっと、なにが!?全然何にも問題ないけど!?」
「え、あ、そうですか。それならいいんですけど……」
『百さん、これも良かったら食べてください』
百さんに自分から卵焼きを進めると百さんはありがとうといって食べてくれる。
でもやっぱりなんだか変だ……。
「……あ、そろそろイルカショー始まりますよ!!」
「本当だ三月!ごちそうさまでした!!」
なんだかんだで空になったお弁当箱を片付けて私たちはイルカショーへと向かった。
ここのイルカショーはすごく有名みたいで前にテレビでも紹介されてるのを見てすごく見たかったからそれを百さんと見れるのがなんだか嬉しかった。
「じゃあ俺と陸はこっち座るんで百さんと柚葉さんはあっちどうぞ!」
「え!?」
『一緒に見ないんですか?』
「ほら、あんまり固まってるとほかのお客さんにばれちゃうかもしれないし、4人で座るよりは二人で別れたほうがいろんな角度から見れて後で話すことも増えるしな!」
「なるほど三月!!じゃあまた後で百さん柚葉さん!」
二人は少し離れた前の方の席に座って私たちはぽつんと取り残されてしまう。
百さんもなんだかあっけにとられていて、私はスマホに『とりあえず座りましょうか?』と打つと、そうだね!!といってこれまた前のほうの席に案内された。
席はあんまり広くないから自然と肩が触れてなんだかドキドキする。
陸君と三月君と一緒に行動する前は手をつないでいたというのに……。
『楽しみですね!!』
「そ、そうだねっ!!うわぁでもここ水飛んできちゃうかも!!」
『え!どうしょっ、水除け買ってなかったし』
「なんとかなるって!!ほら始まるよっ!!」
なんだか百さん元気になったみたい。
良かった、笑顔でこっちを見てくる百さんはいつもの百さんだ。
イルカショーが始まる笛の音が鳴り響く。
3匹のイルカさんたちが出てきて、スタッフさんの指示で高く高く次々にジャンプして、照明に照らされたそれはとてもとても綺麗で、私の声が出ればきっと歓声を上げていたとこだろう。
「うわー!!すごいっ!!ほらほら柚葉!!」
スマホを打つことも忘れて私は笑顔で頷く。
すると人一倍大きなイルカが大きなジャンプを決めて、大きな水しぶきがこっちにむかって飛んできた。
あれをまともに浴びたらびしょびしょだろうななんて思ったが、私の視界は一気に暗くなる。