*人魚姫の涙の意味は……*

□七章《遠くて遠くて……》
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百さんと水族館に行ってから二週間が経った。

あの後、私たちは百さんが予約してくれていたレストランでご飯を食べて、帰路についた。

連れてってくれたレストランは美味しくて、特にデザートの飾り付けがとても素敵で写真をパシャパシャとっていると、百さんにわらわれてしまいすごく恥ずかしかった。

百さんへの気持ちに気付いてしまった私にとって、二人きりな車の中だけでも心臓に悪かった。

行きのときはあまり気にしていなかったけど、百さんは横顔もかっこよくて……ずっと見ていたいのに恥ずかしくて目を逸らしてしまう。

そんな私はきっと彼にとって滑稽に見えただろう。


帰る時もなかなか百さんの顔が見れなくて、結局逃げるように部屋にかけこんでしまった。

そんな私に百さんは「今日はありがとう!すっごく楽しかったよ!!またオフの日分かったら連絡するね」なんてラビチャを送ってくれる彼は本当に良い人だ。

あれから二週間、たまにラビチャが来るが疲れているだろうと思うと長話をするのも悪くてすぐにおやすみなさいと話を切ってしまった。


もっと話したいし、電話ができるなら声だって聴きたいのにそう思う私は本当に我儘だ。


目の前のメレンゲをスポンジの生地に合わせていれば、後輩の子たちが何やら騒がしい。

今日はこの店にテレビの取材が入るらしい。


話せない私には関係のない話だ。一体有名人でも誰が来るんだろうと思っていれば、厨房の中にカメラが入ってきた。


「すみませーん、今日はよろしくお願いします」


カメラマンさんとスタッフさんが元気よく入ってくる、うちの厨房はだいぶ大きい方だがなんだか狭く感じてしまう。


「それではRe:valeさん入ります!!」



え? Re:vale??


「はーいっ、皆さん今日はよろしくお願いしますっ!!」

「よろしくね」



周りの後輩たちが悲鳴を上げる、私も上げることができればきっと私でも挙げていた。

目の前にはRe:valeの二人、百さんと千さんだった。


あの水族館に行った時とは違う、彼は本当にRe:valeだった。私にだけ笑ってくれた彼とは違う、叫ぶ後輩たちに「よろしくね!」と言っている彼はアイドルそのものだった。

私はなんだか目が合わせられなくて、目の前の生地を混ぜることに集中する。


「今日は最近話題のケーキ屋さんにお邪魔してみました!!俺もダーリンにたまには手作りお菓子でも作っちゃおうかな」

「モモが頑張ってくれるのは僕としてはすごく嬉しいけど、モモは料理とか苦手だろ?だから一緒に作ろうか、僕が教えてあげるよ、ハニー」

「ちょっ、ダーリンまじイケメン!!もう大好き!!」

「僕もモモのこと大好きだよ」



「やばい、Re:valeの夫婦漫才がリアルで見れるなんて」

「もう死んでもいい、百さんも千さんもかっこいい……」

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