*人魚姫の涙の意味は……*

□九章《忘れられない笑顔》
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百さんとさよならをした夜は何もする気が起きずそのままベッドにうつ伏せて寝てしまった。そのときにちゃんと布団を羽織らず、エアコンの利いた中で眠りについたせいか、あろうことに次の日には熱を出して寝込んでしまった。

声の出せない私は職場の同僚にラビチャで事情を送り、店長に伝えてもらった。

本来欠勤の連絡をラビチャでするなど御法度だが店長は私の事情をよく理解してくれており、友達伝いに三日間お休みをあげるからゆっくり休みなさいと優しい言葉をくれたので私はそれに甘えることにした。


その時に目に入ってきたのは百さんからの大量の着信履歴と、ラビチャの通知だった。


気にはなったが私は無言で通知を消去した。

自分でもう関わらない、遠くから応援する、そう決めたのに、決心が揺らいでしまいそうになる。


『柚葉!!』


そう叫んでくれた彼の声が昨日から耳から離れなくて、それを思い出すたびに胸が苦しくなった。

信じられないが、うぬぼれかもしれないが、百さんはもしかしたら私のことが好きなのかもしれない。
もしかしたら同じ気持ちなのかもしれない。

そう思うと自分の気持ちをすぐにでも伝えたくなった。
だけどそんなことは許されない、だってもしそうなら私の態度は絶対に百さんを傷つけてしまったから。



熱はそこそこ高いらしい。
なんだか意識がクラクラしてきた。

何か食べて薬を飲まなきゃいけないのに体は無理だと悲鳴をあげているようだった。



ピンポーン


チャイムの音がする、何も荷物なんて頼んでいないのに?

頭がクラクラしていた私はそれでも必死に立って、インターホンすら見ず、そのドア尾を開けて、ぎょっとした。


「こんにちは。昨日ぶりだね」


目の前にいたのはRe:valeの千……さんだった。



「冷蔵庫のもの勝手に使ってごめんね?とりあえず食べやすいようにお粥にしたから。あーんして食べさせてあげたいところだけど、そんなことしたらうちのモモに怒られそうだからね」

モモは怒ると狂犬みたいなんだよ、なんて笑いながら言いながら彼は私の前に美味しそうなお粥を差し出した。

私はスマホで「ありがとうございます」といって渋々そのお粥に口をつけた。
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