*人魚姫の涙の意味は……*
□十一章《風邪の特効薬》
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結論を言うと三日お休みをもらっても結局、風邪は治らなかった。
千さんが帰った後ぐっすり寝たものの、彼の一言がどうしても気になってしまい、もんもんと考えているうちに気付けば三日経ってしまった。
一応薬は効いて熱はないものの、まだ身体のだるさは取れず、かといってこれ以上職場に迷惑かけられないので出勤をしたのが今日のこと。
明らかにだるそうにしている私を心配した店長に強制的に早退にされてしまい、私の三日ぶりの勤務はわずか三時間で終わってしまった。
熱はないから頑張ればなんとかなるのに……。
かといって職場を出れば気が緩んでしまったのか少しふらふらしてしまう。
人にぶつからないように気をつけて歩いていたのだが、つい目の前が暗くなりふらっと身体が傾いてしまうのを感じた。
あ、やばい……
「っとと、大丈夫ですか?」
地面にぶつかる前に誰かに抱き留められ、私は痛い思いをせずに済んだ。
視界に移ったのは黒いスーツ。
結構身長が高いのだろうか、支えられているのは分かったけれど胸の辺りしか見えなかった。
やばい、すぐ立たなきゃ……そう思うが身体がうまく動かない。
「万理さんどうしたんですか!?」
可愛らしい女の人の声と、ターコイズの様な碧い瞳を見たような気がして私は完全に意識を失った。
目が覚めて最初にみたのはコンクリートの天井。
どこだろうとおもって起き上がれば目の前にいたのは…え、うそ……
「あ、良かった。身体大丈夫ですか?」
声を聴いて違った。
一瞬びっくりした、彼は私が学生の時失恋した彼に見た目がそっくりだったから……。
でも声も違うし、よく見れば瞳の色も違う、それに目の前の人は彼よりもっと、かっこよかった。
え、ここどこ!?
「悩んだんだけどうちの事務所が近かったから連れてきちゃいました、紅茶はお砂糖はいる?」
横に首を振ればすごくきれいな笑顔で彼はその場を離れていった。
私はかけられていたブランケットを少しだけよけてまわりを見渡した。
彼はさっき事務所といっていた、
なんの事務所だろう、そう思いきょろきょろしていれば私の目に止まったのは今大人気のIDOLiSH7の特大ポスター、え、まさかここって……。