*人魚姫の涙の意味は……*

□十六章《私が好きになった人》
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ドアを割って入ってきたその男性は私が話せないことは知らないのか答えないとどかないとでも言う勢いだった。


「早く教えてもらませんかね?こっちも忙しいんですよ、付き合ってるんですよね?」


付き合っていません、さっきからずっとそうかえしているのに男は引き下がらない、警察を呼ぼうにも、呼ぶより彼が中に入ることのほうが早いだろう。


怖い、怖い怖い怖い……身体が震える、どうしょう、どうすればいい……

どうすれば百さんに迷惑かからない?どうすれば……


ガンっ、男がドアを乱暴に叩く、怖い、怖い……誰か……。



「おおっと、そこまでにしてもらおうかな」

「誰だよお前、邪魔すんな!」

「邪魔するなっていうけれど、足が部屋に入ってるし、充分不法侵入になりますよ?それに俺の彼女に様ならまず俺に話してもらえますか?あ、そのバッグ、なんでしたっけ、どっかの週刊誌さんのですよね、えっと……どこだったかな」

「ちっ、また来るからな!」


例の男は舌打ちしてアパートを激しく音を立てて降りていった。
その場にへたりこむ私の目に入ったのは優しく笑顔で手を差し伸べてくれるいつぞやのイケメンな事務員さんだった。




大神さんは私の代わりに職場に電話してくれた。
どうやら千さんから連絡をもらってわざわざ来てくれたらしい。

昨日、百さんがうちを出ていった時にパパラッチに撮られてしまったらしく、まだ大騒ぎにはなっていないし、記事にもなってはいないが、一人に撮られれば何人に撮られているか分からない。

また押し入られたら大変だと、とりあえず案内されたのは小鳥遊事務所だった。

本当は岡崎事務所にといった万理さんだったが、私の泣きはらした眼と強張った様子でなにかあったことを察してくれたらしい。
久しぶりに訪れた小鳥遊事務所はあまり変わっておらず、この間は会えなかった社長さんがうさぎ?のような生き物を抱いて声をかけてくれた。


「いやー大変だったね、怖かったでしょ?狭い事務所だけど安心してゆっくりしていってね」

『こちらこそご迷惑をおかけして申し訳ありません』


大神さんの話だとこの人はどうやら紡さんのお父さんらしい。すごく柔らかい雰囲気がそっくりだ。
IDOLISH7の皆は今日仕事で紡さんもいないらしく、事務所には万理さんと社長さんだけだった。


これからどうしょう。
さっきは大神さんが守ってくれたけれど、これからずっととはいかない。
怖い、百さんに会いたい……百さん、怖いよ……
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