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□*マゼンダの瞳に魅せられて*
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「ねぇねぇ名無しさんちゃん!今日こそはモモちゃんとご飯行くよね?ね!?」
「こらモモ、名無しさん困ってるだろ」
「だってユキ―!俺ずっと前から誘ってるのに全然OKしてくれないんだよっ。さすがの俺でもそろそろ泣いちゃうよ」
「名無しさんだって忙しいんだよ。そうだ、この間見たい映画あるっていってたよね?たまたまチケット取れたんだけど、よかったら一緒にどう?」
「ちょっとまってよユキ!ユキだって誘ってるじゃん!!抜け駆けずるいよっ!!そうそう!今度三月とテニスしに行くんだけど名無しさんちゃんも一緒にどう??確かテニス好きだっていってたよね!」
「あの……すみません、そろそろ次の現場に向かいたいのですが……」
「俺とご飯!行くよね!?ね?」
「もういい加減にしてください!名無しさんさんが困ってますよ」
「うっ……ごめんつい……」
「もうモモは仕方がないな」
「ユキだって誘ってたじゃん!!なにしれっと俺だけのせいにしてるの!?モモちゃんショックだよっ!!」
「はいはい、分かったから、ほら行くよ」
千さんに促されて渋々歩き出す百さんに私は笑いを堪えるのが必至だった。
岡崎事務所に就職して早半年、今超絶人気のアイドルグループRe:valeのマネージャー補佐になって三ヶ月。
千さんと百さんは相変わらず私をからかうのが楽しいのか毎日のようにこんな日常を迎えていた。
岡崎さんがそんな私をいつも助けてくれるからいいものの、あんな美形で誘われたら私立ってどうしていいかわからなくなる。
だって二人ともすごくかっこいいんだもん。
マネージャー補佐なんだから食事くらいとも思ったが、万が一週刊誌に取られてしまうとと思うととても怖くて行けない。
岡崎さんを入れて食事をすることはあるが、二人からの個人的な誘いはすべてキャンセルしていた。
そもそもこんな平凡な私と何で食事や映画に誘うのか……彼らならもっと綺麗で一緒にいて楽しい女性の知り合いなんてたくさんいるだろうに……。
百さんも……。
Re:valeについては実は前から私は大ファンだった。
もともとシンガーソングライターとして活動していたが、両親に反対され、結果辞めてしまい、それでも音楽に携わりたいと思ってどうしていいかわからないとき、聞こえてきたのがRe:valeの歌だった。
その圧倒的な雰囲気と、声に私は一瞬で心を奪われた。
後で知ったことだが、Re:valeはもともと千さんは百さんじゃない人と組んでいたららしく、五年でここまで人気になった百さんは素人だったと知り、私は悔しい反面感動した。
かっこいいと思った。
それは一目ぼれといっても嘘ではないくらい……。
それから百さんから目が離せなくなり、事務所に頼み込んで雇ってもらい、やっと彼らのマネージャー補佐の座を手にすることができた。
憧れの百さんの側で仕事ができる、こんな幸せはない。
だからこそ浮かれてはいけない。