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□*マゼンダの瞳に魅せられて*
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「無理じゃないですっ! ずっと、ずっと百さんを見てました、マネージャー補佐になる前からずっと……」
「名無しさんちゃん?」
「たまたま見かけたあの日から今日までずっと見てきました、百さんはかっこいいです、そしてすごいとおもいます、五年でRe:valeをここまで大きくして、本当悔しいですよ……」
呆然とする百さんの奥にギターを見つけて、私はそっとそれを失礼しますと声をかけてから手に取った。
綺麗な音が響く、ちゃんと手入れされている証拠だ。
「私、シンガーソングライターだったんです。この事務所に来る前に両親に猛反対されてその夢は叶いませんでしたが、今でも音楽が大好きです。初めて百さんを画面で見たとき、すごく引き込まれました、その声に、表現力に。
私の心は一瞬で引き込まれてしまいました」
百さんはまっすぐ私を見ていた。
「百さんが元は素人で、五年でRe:valeをここまで大きくしたって聞いて尊敬の反面、悔しかったです。私の叶えられない夢を叶えた百さんに対して、大変失礼ですが、悔しいと思いました……でもそれを吹き飛ばしてしまうほど、私はあなたの歌に惹かれたんです」
「じゃあ……なんで泣いてたの?」
「それは……切なくなって……。私がいくら想っても、私が百さんの一番になることは叶いません、だって百さんには千さんとRe:valeがあるから」
「俺は……同じくらい名無しさんちゃんのことも大事に思ってるよ」
ほらまた、そんな真剣な眼差しでそんなこという。
「そんなこといわれたら期待しますよ?」
「すればいいじゃない!俺は……」
「私は、マネージャー補佐です。それに百さんには私なんかと遊ばなくてもほかにいくらでもいるじゃないですか」
「遊びなんて思ってないっ!!」
「っ……」
「そりゃあ俺にとってRe:valeは大事だよ、ユキさんも本当に本当に大事だし、大好きだよ。だけど俺は名無しさんちゃんのことも……名無しさんのことも同じくらい大好きだよ。本当に好きなんだよ」
「百さん……」
「俺の気持ち、否定しないでよ。こんなに好きなのに、それとも名無しさんは俺のこと嫌い?ユキさんのほうが好きなの?」
「違います、私だって……私だって、百さんが好きです……」
百さんの匂いが近づく。
暖かい温もりに包まれて、百さんは私の名前を呼んだ。
「夢、じゃないですよね……」
「夢じゃないよ、なんならももちゃんのほっぺつねってみる??」
「それ、百さんが痛いだけじゃないですか」
「ははっ、確かにね。でも名無しさんに痛い思いはさせたくないからさ」
「本当、ずるいです……」
「おかりんやユキさんには俺から話すよ、絶対、名無しさんには辛い思いさせない、絶対幸せにするから、俺と付き合ってくれますか?」
マゼンダの瞳が私をまっすぐに見つめる。
あぁ、本当にずるいよ、そんな目で見られて首を横に触れるわけがない……。
大人しく縦に振れば、彼は私が大好きな一番の笑顔を私にくれた……。
「ねぇ名無しさん!今度ここに旅行に行こうよ!」
「ダメですよ百さん。スケジュールきつきつです」
「えぇー!!!いいじゃんなんとかするからっ!」
「なんともなりません」
「おかりんー!!」
「百君、なんともなりませんからまたの機会にしてください」
「……モモはもう僕のことなんてどうでもいいんだね、ちょっと寂しいな」
「ええぇ!!!ちょっ、そんなことないよっ!!ユキさんのことも大好きだよ、超絶大好きだよっ!好きすぎてやばいよっ!名無しさんと同じくらいにっ!」
「百さんっ!!!」
「いいんだよ、無理しなくて……じゃあモモを取り戻すために名無しさんには僕に惚れ直してもらおうかな?」
「えぇ!!!」
「ね? 僕じゃ、ダメ……?」
「それは……」
「ダメに決まってるじゃんっ!!!ユキさんに迫られたら名無しさんだって本当に惚れちゃうかもしれないでしょっ、勘弁してっ!」
「百さんそれは酷いです……私そんなに軽くない……」
「え、ちがっ、ごめっ……」
「ほら、モモなんて辞めて、やっぱ僕にしない?」
「しません!!ダメです!!名無しさんも顔赤くしないでよっ!俺にだってそんな顔見せたことないじゃんっ!!」
「だって、千さんエロかっこよくて……」
「確かにユキさんはかっこよくてエロくて本当に本当にイケメンだけど、それでもダメ!ちゃんと俺だけ見てて!!」
「モモ、恥ずかしくないの?」
「私は、恥ずかしいです……」
「お、俺だって恥ずかしいよ!!」
「ほら、もうお仕事しましょ。百君も千君も準備して」
「はーいっ」
これからもそのマゼンダの瞳と大好きな音楽と一緒に私は歩いていく。
また似たようなやり取りが交わされるのは、収録が終わる2時間後のことだと今の私はまだしらない。
END