*i7*

□*Fascinated by the song*
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始めてその歌を聞いた時、俺は本当に天使の歌を聞いたと思ったんだ……。




彼女を知ったのはオフの日に三月たちと一緒にサッカーをした帰りだった。

たまたま通った道で彼女はストリートライヴをしていて、信号が赤だったのもあって耳を傾けた。

そこから聞こえた歌にびっくりした。

澄んだハイトーンの声に特徴的なギターの音。

メロディはどちらかというとバラードでその声はなんだか不思議な魅力を放っていた。

姿を見ようと目を凝らしたが後ろ姿しか見えなかった。
今すぐにでも車を降りて顔を確認したかったがあいにく信号が青になってしまったためそれは叶わなかった。


「どんな子が歌ってるんだろ……」


それからその子のことが気になってしまい、オカリンにも聞いてみたがそもそも声しか分からないから調べようがないといわれてしまった。

せめて名前だけでも分かれば……あの時パーキングに停めてでも見に行かなかったことが悔やまれた。


「なに、そんなにその子気に行ったのモモ?」

「いや本当にすっごく綺麗だったんだよっ!!なんかこう、そう天使!!天使みたいな!!」

目の前で笑うユキだが俺からしたら冗談をいってるつもりはない。

今でもあの歌が耳から離れない、まるで初めてRe:valeの曲を聞いたときのような衝撃だったから。


「でもそんなにモモが入れ込むなんて相当だね、ちょっと妬けるな」

「え、ちょっ、そりゃあダーリンの曲が一番だよ!!一番愛してる!!」

「分かってるよ、僕も少し興味がでたからぜひ聞いてみたいな」

「見かけた日から毎週見にいってるんだけどここ二週間見ないんだよね、もしかしたらもう他のとこに拠点移しちゃったのかも」

「でもそんなに上手い子ならとっくにどこからかデビューの話がきてそうだけど……」

「あ。確かに……」

「そんなに百君も絶賛するなら、事務所として聞いてみたいですが……」

「とりあえず今日もよってかえってみるよ!!ほら帰り道だからさ!」



今日も仕事が順調に終わったので、俺は例の場所に変装して向かった。

少し近くなればあの時きいたギターの音が聞こえてきて俺は胸が高鳴った。
速足になりながら向かえばそこにはもう人だかりができていた。

さすがに人だかりに紛れるわけにはいかないので、少し離れたところから顔が見えそうなところを探す。

そこにいたのは特徴的なはちみつ色をしたロングヘア―の女の子だった。

結構華奢みたいで、ギターが少し大きく見える。

だけどその歌声は近くで聞けば聞くほど澄んだ綺麗な声をしていて、力強さのようなものも感じた。。

ただ異質なのは目にかけてるぐるぐる眼鏡だ。

その眼鏡のせいでどうしても顔が見えない。


「なんであんな眼鏡付けているんだろ……」


そう思って聞いていれば、人だかりから何人か離れていくのが見えた。


「声すっげぇ綺麗だけど顔が分かんないんじゃな……」

「胸もでかいし、結構美人そうなのにもったいないよな。本当に美人なら大ヒットしそうだし」


別に俺はアイドルって仕事についてるから見た目が全く必要ないとは言えない。
俺だって昔はおしゃれとか全然興味なかったし……

だけどこんなに綺麗な歌声が、見た目が見えないせいでちゃんと評価されないのがなんだか聞いて悔しかった。

その眼鏡のせいか、曲が終わるまでには人だかりは霧散していて、彼女は少し俯いたのちギターを片付け始めてしまった。

周りにあまり人がいないことを確認して俺は彼女に歩み寄った。


「もう帰っちゃうの?」
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