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□*仲直りはお早めに*
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「お前にはどうせわかんないだろ!!!口出してくるなよ!!」
一方的に電話を切って、俺はベッドにうつ伏せた。
きっと今頃電話先で泣いてるんだろうなと思い、ごめんと一言ラビチャを送ろうと思ったが、やっぱりやめて枕に向かって盛大なため息を吐いた。
電話先は名無しさんといって、俺がもう五年も付き合っている彼女。
IDOLISH7でデビューして、アイドルとして彼女がいるのはダメなんじゃないかと我ながらすごく悩んだけどどうしてもこいつだけは捨てられなくて今は一織だけが知っている秘密の関係だ。
こんなのマネージャーにも事務所にも将来迷惑がかかるかもしれないのに、我ながら勝手だと思う。
彼女はいわゆる幼馴染だ。
親同士が近所で仲が良くて、ゼロのライヴにいったときも一緒で、何をするにも一緒だった。
恋人になったのは五年前。
バレンタインの日に手作りのチョコをもって告白して、あいつは絶対一織が好きだと思っての玉砕覚悟だったが、返事はokですごく嬉しかったのは忘れられない。
そんな彼女だが、実は一般人ではない。
今すごく人気のアイドルグループに所属していてセンターも務めている超人気アイドル。
デビューしたのは去年なのに、もうそこまで上り詰めていて、俺としては少し差を感じて悔しい気持ちが拭えなかった。
昔から可愛くて歌もダンスもできて、スカウトされたと聞いた時にはあまり驚かなかったが実際こう自分よりも有名な番組にたくさん出ている彼女を見ているといささか不安な気持ちにもなる。
だからかもしれない。
さっきもいつものお休みの電話なはずなのに、なんだか俺がイライラしていて、いつもなら嬉しい三月なら大丈夫だよって言葉がなんだか無償に上からに感じて、つい怒鳴ってしまった。
優しいあいつのことだから元気付けようとしてくれたのは分かってるつもりなのに、どんだけ小さい男なんだと我ながら情けなくなる。
「本当、俺ダメダメだなぁ……」
明日はよりにもよって彼女と一緒の収録がある。
彼女だってプロだ。そんな顔に出したりはしないだろう。
だけどやっぱり気分は晴れなかった。
そのまま眠れないまま当日を迎え、俺は一緒に出演する一織と一緒にぐったりした状態でスタジオ入りした。
「兄さん、今日彼女と出演一緒なの分かってます?」
「え、もちろんだろ!なんでだよ!」
「だったら、前日に喧嘩なんて……」
「おまっ、何で知ってるんだよ!!」
「兄さんの様子を見てればわかります、とりあえず先に楽屋にいって謝ってきたらどうですか?彼女、今日は一人で参加ですよね」
もっともなことを言われて黙ってしまう俺に、一織は早くいってきてくださいと促してくる。
仕方なく名無しさんの楽屋まで足を運んだものの、なかなか中に入ることができない。
こうしていても埒はあかないし、昨日のはどう考えても自分が100%悪い。
謝るのが筋だと思い、俺はドアを叩こうとした。
「へぇーそうなんだ!本当名無しさんちゃん面白いよね!!」
「そんなことないですよっ!!百さんには適いません」
「そんなに褒められちゃうと百ちゃん照れちゃうなぁ」
中から聞こえてきたのは先輩アイドルでバラエティーでもお世話になっている百さんとあいつの声。
なんであいつらが? しかもすげぇ楽しそうだし……。
なんとなく入りづらくて、俺が立ち尽くしていると、中からの会話が聞きたいわけでもないのに聞こえてきた。
「百さんにはいつもお世話になって本当に感謝しています!それにバラエティー慣れしていない私をうまくリードしてくれて……」