*人魚姫の涙の意味は……*
□六章《気付いてしまった……》
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百さんは無神経な人じゃない、ちゃんと周りのことも考えてくれている人だ。
本当に私の力になりたいと思っていった言葉だって、私にだってわかった。
きっと彼はもうこのことには触れない、もしかしたらもう私と会うこともやめてしまうかもしれない。
そんなの、そんなのは嫌だ。
「柚葉ちゃん?」
気付けば私は百さんのジャケットの裾を引っ張っていた。
彼はどうしたの?と私の顔を覗き込む。私はスマホを片手に文字を打って彼に見せた。
『くだらない話ですが、聞いてくれますか?』
そういうと彼は少しだけ嬉しそうに、座ろうか、といって私の手を引いた。
適当なところに腰かけて、私はスマホで話し始めた。
『私、昔は歌を歌うことが大好きなんです、歌で人を幸せにしたい、もっとたくさんの人に聞いてほしい、そう思ってたんです。中学の時、合唱コンクールがあって、そこで私、ソロパートを任されて……』
少し言葉に詰まると、百さんが優しく背中をなでてくれた。
それに勇気をもらって私は続けた。
『周りの同級生から、私の声が変だとか、私の声のせいで音程が取れないとかですごく言われてしまって……当時、すごく仲の良かった男の子がいたんです、でもその子にも急にそっけなくされて、放課後教室に寄ったときにその子が私の声が嫌い、気持ち悪いっていうのを聞いてしまったんです』
「……」
『その次の日から、私は歌うことができなくなりました。声を出すことも歌うことも怖くなったんです。ただの弱虫なんです。……学校を転校しても、やっぱり怖くて、そんな中学の出来事を今までずっと引きずって。変ですよね、本当、私ダメなんです』
「ダメじゃないよっ!!」
ふわりと百さんの太陽のような匂いが近くなる。
抱きしめられてる、そう分かった瞬間私はパニックでとっさに離れようとするが、百さんは私をさらに強く抱き寄せた。
「俺は柚葉ちゃんの声、聴いたことないし、歌も聞いたことないからうまいこと言えないけどさ、変なんかじゃない。ダメなんかじゃないよっ!!」
百さん……
「その男の子のこと、ほら、、好きだったんでしょ?そりゃあ好きな人にそんなこと言われたらショックだろうしさ、辛くてどうにかなっちゃうよ……って、あぁごめん!!!俺、ついっ」