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□*マゼンダの瞳に魅せられて*
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百さんはよい人だ、近くで見ていて本当に優しいし、面白いし、何より人と関係を築くのがうまくて、とても楽しそうだった。
私もその中の一人。
特別でもなんでもない、ただそれだけの人。
「そう思ってても、ドキドキしちゃうんだけどね……」
「どうかしましたか?」
「あ、いえ!なんでもありませんっ!!」
ほらもうすぐ集中切れちゃう。
補佐だからと言って私が彼らの足を引っ張る原因になっていいわけがない。
気を引き締めなきゃ。
そう思っているうちに車は次の現場へと到着する。
今日の仕事はこれで最後。最後は歌番組の収録だ。
「こんにちわー!今日もよろしくお願いしまぁぁすっ!」
ほら、百さんが現場に入って挨拶するだけですごく明るい雰囲気になっていく。
こんなの百さんにしかできない。
「あ、千さん、百さん、メイクこちらでお願いします」
「わかった」
衣装に着替えてメイクして、次に出てきたときに私の前に立っていたのは、世間が騒ぐRe:valeの二人だ。
立ち位置についた瞬間、彼らの雰囲気が変わる。
音楽と声に一体感が生まれ、ダンスがリズムを刻む。
軽快な音楽の中に二人の真剣な表情がスパイスになってRe:valeにしか作れない音楽が完成されていく。
「すごい……」
何回見てもそう思う。
自分の立てなかった場所。
見るたびに悔しさがこみ上げるけど、それを全部かっさらって、彼らは私に音楽の素晴らしさをいつも伝えてくれる。
あ、今一瞬百さんと目があった。
百さんはずるい。
私の気持ちも知らないで、そうやって私の気持ちをどんどん奪っていく。
叶わないことなんてわかってるのに、期待させる。
なんか泣きそうになっちゃった。
「ありがとうございましたー!お疲れー!!」
「お疲れ様」
いつの間にか曲が終わっていて、私はあわてて溢れそうになった涙をぬぐった。
「お疲れ様でした!今日のお仕事はこれで終わりです、岡崎さんは番組プロデューサーとお話をしているので今日は私がお送りします」