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□*花言葉に想いを束ねて*
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「俺、彼女なんていないんだけどね!」


あれ?そうなの?

「そうなんですか? いつも彼女さんへのプレゼントかと……」

「大好きな大好きな相方と弟分はたくさんいるけどさ!彼女はいないよ」

「百瀬さんもてそうなのに……どことなくRe:valeの百さんに似てますし」

「あははっ!よく言われる!」


声や雰囲気がなんとなく似てるなぁとは思ってはいたけど、やっぱり似てる。
でも本人がこんなしがないお店に来るわけもないし、やっぱりそっくりさんなんだろな。


「はいっ、できましたよ」

「ありがとう!いつ見てもパーフェクトだねっ!」

「いいえ、そんなことないですっ。きっと百瀬さんからその花束をもらう人は幸せですね!」


百瀬さんは少し困ったように笑うといつものように店を出て行く。
やっぱり高そうな車、モデルさんとかなのかな。

でもお客さんのことに深く詮索いれるのもよくないし、これ以上踏み込むとなんだかよくないことが起こりそうな気がする。


「百瀬さんの素顔見たことないけど、やっぱりかっこいいんだろうなぁ」


千さんみたいな人は確かにかっこいいけど、実際好きになるなら百瀬さんみたいな人の方が楽しそうだ。
それになにより、朝一で来て明るい空気を残して去っていく。百瀬さんが来た日はいつもそのままなんだか楽しい雰囲気になれるから水曜日と金曜日が楽しみで仕方なかった。

「いい加減ライヴも行ってみたいんだけどな……」

人が多いところが苦手な私にはなかなかハードルが高かった。
そりゃあ生声が聞いてみたいけど、私にはテレビとCDだけで満足だった。

お客さんがいないのをよいことにイヤホンをつけてこの間出たばかりの新曲を聞く
。こうして聞くとやっぱりいい。

千さんが私は大好きだけど、百さんもやっぱり好きだ。
ずっとこの二人で歌っていてほしい、この歌を聴くだけで幸せになれる。


「はぁ、次百瀬さんが来るのは金曜日か……」


遠いな……もっとRe:valeの話だってしたいし、できるなら百瀬さんのことももっと知りたい。
これはきっと恋まではいかず、ただの好奇心だ。

「何でこんなに百瀬さんが気になるんだろ……」


店内にベルが鳴り響き、お客さんが入ってくる。
私はあわててイヤホンを外して、「いらっしゃいませ」と仕事に戻った。




「おっはよー!」

「あ、百瀬さんおはようございます。今日も元気ですね!」

「もちろんっ!今日なんだけど、バラの花束にしてくれる?」

「初めて会ったときみたいですねっ!わかりました」


色の指定はなかったので、赤いバラとピンクのバラ、カスミソウで私はまとめていく。
そんな手元を、百瀬さんは相変わらずじっと見ていた。


「それで、この花束はいつもどんな方にあげてるんですか?」

聞くと、百瀬さんは少し寂しそうに言った。

「それが、いつも渡せないままなんだよねっ!この間来た時もこの間こそと思ってたんだけど、なかなか渡せなくて……あ、でも捨てたりはしてないよっ!ちゃんと大事に飾ってるからね」

「そうなんですねっ、じゃあこの花束は渡せるといいですねっ」

「そうだねっ!ありがとう!」

「はい、できましたよっ!」


出来上がった花束はなかなかの自信作だ。
百瀬さんはその花束の代金を支払うといつものようにそれをもってお店を出ようとする。

今日も結局色々聞けなかったなぁ、なんて思っていれば百瀬さんが足を止めた。


「百瀬さん?」


少しそのまま固まって、何故かその場で深呼吸をし、落ち着いたのかこっちに振り返った。
心なしか少しだけ頬が赤いきがする。
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