*i7*
□*I`m foud of you......*
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「ねぇモモ」
「んー?」
「本当にいいの?」
いつものモモリンを飲んでいれば、ユキが神妙な面持ちで声をかけてきた。
何が?と聞けば、「彼女」とだけ言われ、思わずジュースを吹きそうになる。
「ちょっとユキ!」
「最近というか、ここ数年全然あってないんでしょ?」
俺は言葉が詰まった。
Re:valeになる前、たまたまライヴハウスで出会った名無しさんは、俺が人生で初めて一目ぼれして、人生で初めてナンパした女の子。
もう本当に可愛くて、超絶タイプで、気が付けば心臓がバクバクいうのを我慢しながら声をかけていた。
告白したときの名無しさんの少し恥ずかしそうな彼女の笑顔を思い出せば、俺はきっと二十四時間も四十四時間も余裕で歌ってられるくらいだ。
そんな自慢の彼女だか、ユキの言う通り最近は全然会えていない。
Re:valeとして生きていく、その覚悟がんあかったわけじゃないけれど、あの時の俺は正直彼女のことまで考えてあげられなかったんだと今は思う。
「たまには会ってきたら?」
「……そりゃあ会いたいよ、だけどもし万が一写真でも撮られたらおかりんにもユキにも迷惑かけるじゃん……」
「だけど彼女、寂しいんじゃない?」
今日のユキはえらく俺の気にしてるところをグサグサとついてくる。
何!今日はSの気分なの!?
「……別れたほうがいいの、わかってるんだけどさ……」
「でもそれができないからまだ続いてるんでしょ?」
「う……」
名無しさんは可愛いし、性格だって良いから俺みたいに寂しい思いさせる男なんかよりきっと、大事にしてくれる男はたくさんいる。
そう思って何度も別れ話を切り出そうとしたのに、結局それは言えず終い。
こんなドタキャンばっかで最低なことしてるのに、手放したくないなんて俺は本当に我儘だ。
「モモは仕方ないな」
「ユキ?」
「なんでもない、ちょっと電話してくる」
電話? ユキから? 誰と?
万さんかな、うぅ、俺も名無しさんに電話したい。
けど、もうすぐ収録始まるし、時間も遅いし……昔はこんなこと気にせずすぐに会えたのに……。
「モモ!」
「ユキ、万さんだったんでしょー?」
「違うよ、大和君。許可もらったから」
「許可??」
何かを楽しみにしているような笑みに、俺は首をかしげることしかできなかった。