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□*Precious time with loved ones*
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まさか……
少し長い廊下を駆けて、リビングのドアを開ければそこには愛おしくて愛おしくて仕方がない彼がエプロンを来てで迎えてくれた。
「あ!もう帰ってきちゃったの!?早くない名無しさん!」
「百……何で……」
「何でって、今日、記念日でしょ!俺たちが付き合った大事な日!!」
あ、やべっ、なんて言って彼は鍋の火を止めてこっちに駆けよってきた。
「今日はモモちゃんからのサプライズパーティーなのだ!!」
部屋を見れば飾り付けがされていた。
いつもの味気ない部屋が、色々な飾りでキラキラしていて、なんだか別の部屋みたいで、何より目の前にいる百がいつも通りすぎて、私は駆け寄ってきた彼を軽く突き飛ばした。
「名無しさん?」
「……ばか……百の馬鹿!なんで急にこんなことするの!?最近連絡も全然くれないし、帰ってこないし……なんで……」
もう出ていこうと思ってたのに……
百への気持ちも全部全部捨てようと思って、なのに……
「百がいない部屋は冷たくて、寂しかったよ……不安だった、百が遠くにいってしまいそうで……私ばっかり好きみたいで……」
泣きじゃくる私の頭を彼は抱き寄せて、そっとなでてくれる。
「いつも寂しい思いばっかさせてごめん……名無しさんのこと幸せにするってあの時いったのに全然できなくてごめん……でも俺、名無しさんのこと忘れたことなんて一分も一秒もないよ、遅くに帰ってきて、何度寝てる名無しさんを抱きしめたくなったか分かんないくらい名無しさんに触れたくてたまんなかった……起こすと悪いからって我慢するの大変だったんだよ!!」
「百……」
「……俺さ、名無しさんと別れたほうがいいかもって思ったんだ。辛い思いさせるくらいなら俺以外の男のが幸せにしてくれるかもしれない、名無しさんが幸せになるならそれがいいのかもって……
だけどそんなのやっぱり無理だ!俺、名無しさんを手放すなんてできないよ……勝手だけど、本当に俺ダメダメだけど、名無しさんに側にいてほしいんだ」
「百……私だって、私だって百が、大好きだよ……」
ずるい、こんなサプライズなんて用意して、そんな言葉言うなんて……
「だからさ、名無しさん。俺、多分これからも寂しい思いたくさんさせる、辛い思いさせることもたくさんあるかもしれない、でももし名無しさんがそれでも俺と一緒にいてもいいって言ってくれるなら、結婚してくれませんか?」
「え?」
今なんて……
少し恥ずかしそうに、彼はポケットから小さい箱を取り出して私の前で開いた。
そこにはマゼンダの綺麗な宝石がついたシルバーのリングで……
「……私で本当にいいの?」
「名無しさん以外俺考えられない。名無しさんとこれから少しでも多くの時間を一緒に過ごしていきたい。名無しさんが大好きだから!!」
「私も!!百が大好き……好きだよ。私を百のお嫁さんにしてください」
そういえば久しぶりに感じる唇の感触。
触れるだけでそれは収まらなくてどんどん深いものになっていて、離れたときには私はもう何も考えられなくて……
「やばい、もう無理、モモちゃん限界」
「百……?」
「モモちゃんお手製の料理は後にするとして……」
ひょいっと、私を簡単に抱き上げて彼は寝室へと向かった。
優しくベッドにおろされれば、また降ってくるたくさんのキス。