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□*おはようもおやすみも君の側で
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ため息を吐けばきっと心配かけてしまう、私は心の中だけでため息を吐いて、いつも通り笑顔でお話して帰路についた。
その日はなんだかいつもよりモヤモヤして眠れなかった。
百さんと紡さんのことを考えるとどうしても冷静じゃいられなくなる、だったら自分も行動すればいいのにそんな勇気はない。
こんな情けない私は百さんを好きでいる資格なんてない。
そう思うとその日も眠れなくて、私は結局二人との約束を破ってしまうのだった。
「どうしてくれるんだ!!」
「す、すみませんっ!!本当にすみませんでした!!」
次の日、案の定私は千さんの忠告通り仕事で失敗をしてしまった。
千さんのスケジュールの変更を岡崎さんと千さんに伝え忘れていて、番組の収録に遅刻してしまったのだ。
岡崎さんも必死で頭を下げてくれている。
岡崎さんと、そして千さんにまで頭を下げさせた自分が情けなくて消えてしまいたいくらいだった。
「本当にすみませんでした!僕の監督責任です、今後はこのようなことがないようにしますのでどうか!!」
「本当に、本当に申し訳ありませんでした!!」
「最近Re:valeが乗ってるからってこっちも絶対使わなきゃいけないわけじゃないんだ!TRIGGERだってIDOLISH7だっているんだから!しっかりしてもらわなきゃ困るよ!!」
番組プロデューサーさんはそういって去って行ってしまう。私は岡崎さんに頭を下げた。
けど、岡崎さんはそんな私に頭をあげてくださいといって肩に手を置かれた。
「最近、名無しさんさんにはかなりの仕事を任せていましたし、千君と百君から聞きました。最近、あまり寝れていないんですよね?」
「ご、ごめんなさい……」
「怒ってるわけじゃないんです、今回の件は僕の確認ミスもありましたから。今度からは同じことにならないよう気を付けていきましょう。あと休息も大事なお仕事です。今日はもう上がってもらっていいので、ちゃんと休んでください」
「そういうわけにはいきません!!私のせいで千さんと岡崎さんに迷惑をかけて……Re:valeの……」
「大丈夫ですから。ちゃんと休んでください。じゃないとまた二人に怒られちゃいますよ?」
私は大人しくそのまま家に帰った。
帰り道はどうやって帰ったのか覚えていないほど頭が真っ白だった。
仕事をしていたわけじゃなくて、百さんのことを考えていて眠れなくて、挙句Re:valeの二人があんなに頑張ってここまできたものをダメにするところだった……。
彼らの力になりたくてこの仕事についたのに、逆に迷惑をかけてしまった。
ベッドにうつ伏せになると自然に涙が止まらなくなってきた。
百さんへの気持ちを捨てられたらこんなことにならないのに、だけどどうしょうもなく百さんが好きだ。
番組に出てるときの百さんも、プライベートで楽しそうにスポーツしている百さんも、私にお疲れ様って声をかけてくれる百さんも。
あの可愛い笑顔も、チャームポイントな八重歯も、たまに見せるシリアスな表情も、全部私の心をつかんで離さない……。
抑えようとしても抑えきれなくて、こうして仕事の障害になってしまう。
紡さんはきっとこんなことしない、しっかりとマネージャーとしての仕事をこなしているし、そんな彼女だからこそ百さんも好きになったんだろう。
こんなことで失敗して、私はマネージャーとして側にいる資格すらない。
退職願、書こうかな……そう思っていたときだ。
部屋のインターホンが鳴って私は反射的に飛び起きる。
荷物だろうか……。
帰ってきてスーツも脱いで、まとめていた髪も無造作に解いてしまった。
いつもなら身なりを整えて出るけど、今はそんな気力ない……そのまま出てしまおう。
そう思ってドアを開けて私はすごい速さでドアを閉めた。
え、まって、うそ、絶対嘘。見間違い。
もう一度インターホンがなる、恐る恐るドアを少しだけ開けて除くとそこにいたのは間違いなく、百さんだった。