ビロードウェイ
□1
1ページ/2ページ
私の名前は、泉田 ナナシ。
現在23歳。 独身。
無事高校を卒業した私はそこそこいい会社へ就職した。
「ナナシ、この資料人数分コピーお願いしてもいい?」
『了解。茅ヶ崎、ついでにこのUSBの中身確認してもらってもいい?』
「りょ」
彼は同期の、茅ヶ崎至。
入社した時から部署もずっと一緒。
頼りになる存在だ。
仕事も完璧で見た目もいい彼には負けたくないという気持ちがあり勝手にライバル意識をもっている。
そうして努力しているうちに私と彼はこの部署のツートップになっていた。
「ナナシさんって茅ヶ崎先輩と同期以外に関係はないんですか??」
可愛い後輩ちゃんがそう質問してくる
『??同期以外とは?』
質問の意図が読めず質問で返す。
「だって茅ヶ崎先輩ってナナシ先輩以外の人呼び捨てで呼ばないじゃないですか」
確かに茅ヶ崎以外私を呼び捨てする人はいない。
『うーん確かに…でも同期だし入社してからずっと一緒だから気にしたこと無かったな』
「羨ましいです…私もナナシ先輩みたいに茅ヶ崎先輩に名前で呼んでもらって信頼されるようになりたいです!」
そういう後輩ちゃんは顔を赤くしてすごく可愛い。
いいね…若いな。
「でもまず目標はナナシ先輩に頼られるようになる事です!」
『うぅ、いつの間にそんな立派な事言えるようになったの…ありがとう…』
後輩ちゃんはまっすぐ私を見つめてそう言ってくれた。それだけで今日の残業も頑張れそうだ…
「お疲れ様でした~」
「お先しまーす」
『みんなお疲れ様~』
定時でみんなが帰るのをみてから私は残業のためデスクに戻った。
『後は明日の資料準備して…』
「おつ~」
『ッッ!!!!わっ!…って茅ヶ崎…!』
声をかけてきたのは日中に話題となった同期 茅ヶ崎。
『もー…びっくりしたじゃん…』
「ごめんごめん、帰ろうとしたらナナシ残ってたから残業かなって」
そういってホットココアを差し入れしてくれた。
『気にせず帰って大丈夫なのに…わざわざありがとう…』
こういう優しい所が社内の女性陣の心を鷲掴みにしているんだな…。
そうしみじみ感じながらココアを飲む。
「もう、終わりだよね?俺車だし良ければ送って行くよ」
ッッ!
『いつもありがとう…でもだ、大丈夫!ほら私の家遠いし、わかりずらいしッッ』
家はまずいッッ!!!!
「そっか…ナナシは中々送らせてくれないよね。ご飯とか食べに行った後も飲み会の後も…」
『うっ、、』
「それに…いつになったら俺のこと 至 って呼んでくれるの??? ナナシになら呼び捨てにさてもいいんだけど。」
ぐいっと顔を近づけてそう言う彼はどこか楽しそうにみえる。
『んぐ…からかってるよね!!! 』
そう言うと
「ふふ、バレた?ナナシの事からかうの俺好きだから」
周りは茅ヶ崎の事をイケメン王子様なんて言うが、私にはどうも腹黒王子にしかみえない。
「あと、これよかったら。」
思い出したように差し出されたのは劇団のポスター。
『劇団……』
「そそ、mankaiカンパニーって劇団。俺そこに所属して今度公演あるからよかったら見に来てよ、はい、チケット。」
ポスターと一緒に渡されたのは鑑賞チケット。
『劇団…!すごいね…。チケットまで…これは社内の女の子殺到だ…』
「…チケットまであげたのはナナシだけだけどね」
『えっ?何か言った???』
ボソッと言ったので聞こえなかった。
「いや、何でもないよ。明日も宜しくら、気をつけて帰って」
そういって茅ヶ崎は帰っていった。
『…劇団か…。行ってみようかな…』
公演はどうやら今週末からやっているみたいだ…
チケットは千秋楽のもの。
せっかくなので行くことにした。
行く前に
あの人
に劇団の事いろいろきいてみてもいいかもしれない。
あの人はお芝居が大好きみたいだしもしかしたら一緒にいってくれるかも…。
そう考えて私は仕事を終え、帰路についた。
会社の人には誰も教えていない家に向かって…。