ビロードウェイ
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左京Sideーーー
ドタバタと音をたてながらナナシは身支度をする。
約束通り30分後にすぐに車を出せるよう準備しておこう。
そう思って玄関に向かって歩いていると槙田がいた。
「よう、古市おはよう。」
「チッ…」
今こいつには会いたくなかった。
「お嬢は寝坊か?」
「…だったらなんだ。」
「俺な、お前がお嬢を7時に起こしに行くのみたぜ。」
「!!?」
「7時に起こしに行ったのに起きたのは7時半だった。さぁて何故でしよーか」
「…。」
こいつ…分かってて言ってきやがる…。
「正解は30分間お嬢の寝顔をみーーーモガッ」
「分かってんならそれ以上言うな…」
「…。あいよ。」
槙田には完全にバレている。
それが面倒だ。
ナナシを起こしに行くと幼さの残る幸せそうな表情で寝息をたてていた。
思わず起こしに行った事を忘れて、その顔を眺めてしまった。
誰にも言うつもりもないこの感情をしまいこみ起こした時にはもう30分が過ぎていた。