ラッキーガール、転落す。

□第一章
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「テニス部一緒に入ろうよ」

私のラッキーは茜の何気ない一言から

始まったようだった



「宜しくお願いします」

仮入部で入ったテニス部


初めて見る先輩の姿は格好良かった




まず、部長と副部長さんがシングルをする

「凄い!」


茜は憧れだったテニスを見て嬉しそうだ


「やってみる?」

赤いゴムに髪をポニーテールにした清水部長が話しかけてきた。



「はい!」

茜がいち早く返事をする


ラケットを交換してもらい、茜とシングルをする事になった


「そういえばさ、(名前)」

ラケットを振り回しながら茜が尋ねる




貴「何?」





「カッコイイ先輩いた?」

貴「もう、茜たら そんな所に目行ってた....のっ」




シャトルを打ちながら会話する

私のショットが決まり、茜が大袈裟に褒めたたえてくれた



「凄いじゃん、(名前)」


貴「それほどでも無いよ〜」




笑いながら言う







するとこちらのやり取りを見ていた

男子の部員が 私達に話しかけてきた



「あのさ、お前ら素質あるんじゃねーの?」

「はい?」

爽やかにジャージを着こなし、 鼻の頭に絆創膏を貼っている先輩。

「カッコイイ...」



小さく囁く茜の声がした


確かに 美形だ


背は私の10cm上だし短髪でチャラそうだけど、

何と言ったら良いか、テニスが得意そうな雰囲気がある



清「ちょっと祐、何話しかけてるの」



向こうから清水部長がやって来た

それと副部長さんも



どうやら同じ 中三らしい


清「ごめんね、コイツ....すぐ話しかけるから」


清水部長が祐と呼ばれた先輩の足を踏んでいる



「痛てて、痛えよ、それよりお前さ」


先輩は私を指差した




貴「は、はい!」


突然の事に声が上がってしまった

「お前さ、俺が見るところ結構素質あると思うぜ?」


思ってもいなかった事を言われてしまった


でも 祐 先輩は私の方を見て、ニッと笑っている



貴「そ、そうですか」



私は祐先輩に向かって頭を下げた


隣で茜が 呆気に取られている




清「ごめんね、瀧澤さん....だっけ?

コイツは佐伯 祐。 こう見えて選抜メンバーの一人なんだ」


貴「へえ」


「おい こう見えては余計だろ」



清水部長とコントのように話す姿を見て 仲がいいなと思ってしまった


実際はどうなのかまだ知らないが。



「あの佐伯が後輩を褒めるなんて珍しい 明日は雪でも降んのかな」

艶めかしい髪に額をアップにした小森副部長が言う


「おい!」


小「冗談だって」


そう言い、小森副部長はニヤリと悪戯っぽい笑みを浮かべた














「お疲れ、(名前)」


貴「お疲れ様 楽しかったね」



私と茜は帰り道が同じだ



桜の咲く校庭を見ているとこの中学校に入学できて

本当によかったな、と思う



そして 何より茜とクラスが同じだった




「保体で集団行動やるらしいよ」

貴「えー、怠いなぁ」



算数が数学になり、図工が美術に変わった

どちらもあまり好きではない。




私が一番好きなのは体を動かす事と読書くらいだ


それ以外はアニメに没頭している





「(名前)、また明日」


貴「また明日!」


今日は久しぶりに早く起き、十分なゆとりを持って学校に来た


貴「おはよう!」

「おはよ」

返事を返してくれたのは茜...ではなく

新しく出来た友達の美奈だった。


私たちのクラスは一年一組 担任は谷川先生。

新米の教師と初めて見る仲間に 挙動不審に

なってしまった


そんな中、私に話しかけてくれたのが美奈という訳だ。



美奈「1時間目から国語だってさ」

貴「ふーん、文章書くのあまり 得意じゃ無いんだけどな」


「おはよう!」


貴「茜ちゃん おはよ」

タイミング良く 茜が到着した


美奈「おはよ〜」

茜と私と美奈はいつも一緒にいる。


「今日は(名前)が前から欲しかったもの 持ってきたよ」

貴「え? 何だろう」


茜は美奈の机に鞄を置き、私と美奈の目を引くように

小さな黄色い袋を取り出した


私が茜に欲しいと言ったもの...?

壊れ物を扱うように 妙にゆっくりとその袋を開ける


貴「可愛い」

中から出てきたのは ミサンガだった。


青と黄色のバリエーションがとても可愛い。


毛糸を見るに茜の手作りのようだ


美奈「すごい!」

「へへん、(名前)が喜んでくれてよかった」


茜は得意げに言う。
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