【東京リベンジャーズ】

□【梵マイキー】
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共依存、心中

首を絞める。
マイキーの細い腕や赤い化膿を見つめながら私はマンションの間から見える空を仰いだ。
同時に腕力を掛けられて首の骨が軋む音がする。マイキーに身を委ね私は力を抜いた。

闇に咲く花は闇にしか憩えない。私は明るく、上を向くことしか許されない社会に絶望を抱き、暗く澱んだ血まみれの道を進んだ。

この世界の方が私にはいくらか似合っていた。前を見ていなくても軽蔑なんかされない。自分を受け入れてくれた反社という組織に恩返しをするため身を削って働くのは悪くなかった。梵天が私の唯一の居場所だった。
梵天のみんなの境遇にも同情する。
みんな光など見たくないから私もそうしてきたんだ。けど何でだろう、私の目に映っている青空だけは変わらず好きだった。

みんなで集まって冬空のなか、薪を囲んで話し込んだときもそうだったよね。みんなぼんやり空を見つめていた。イザナのことを思い出したんだろう。
最後までみんなで空を見つめないかと提案出来なかったけど今となってはそうしたほうがよかったかもしれないな。あのメンバーで集まるのも今となっては叶わぬ夢になってしまったけれど残りのメンバーでさ、死ぬ前に星が見れたらなんて思うんだ。

私の他にも思い出してくれる人がいたらいいなぁ。空がだんだん遠くなってきた。視界が霞み、周囲の音も聞き取りづらくなる。終わりが、近づいている。
死の恐怖にマイキーの腕を掴もうと無意識に動いた手を見てマイキーは唇を動かした。

仲間にはそれが何を意味するのか、はっきりわかっていた。

「安らかに眠れ」
「え...うに、ね...る?」(眠るように死ねる?)
「ああ、きっと」
私の言葉が通じたかは知らない。暗く澱んだマイキーの表情は狂気的で、美しかった。
「ゴキュッ」
内部から得体の知れない音が鳴った。大木を掘り起こしているみたいな、音。木を切り倒すとダムから水が溢れ出てくる。とても暖かくて、気持ちい、い...。
心地よい状態のままふぅ、と息を吐き体を預けた。もう後戻りは出来ないだろう。浅い呼吸が続く中で私はもう一度空を見た。
いっそう青く見える。
身体が抵抗してピチピチと跳ねる魚のことをぼんやり思った。人間の身体は生を望むらしいとあるがこれが嫌だから今まで死ぬ勇気がなかったんだ。
空がしらんでいく。私の命が終わるまであと数秒。

だから最後に見れて光栄だと思うよ。
思い出が頭の中を駆け巡っていく。大人になったら立派な人間になれると思っていた。変われない自分。哀れで、不器用で愚鈍な自分。
だからいっぱい手を汚して汚い金で社会が根元の悲しみは取れない。
締め付けていく。
全部、全部やるだけ無駄だった。
復讐して自分で選んだ道なんだから終わりの果てを見れて良かったと今は思っているよ。
生命は途切れ私のいない世界は進んでいく。私は死ぬ。世界が続いていっても私が終わりと言ったなら私の人生は終わり。
解放されるんだ。

天国も地獄も転生もやっぱりないなぁ
生まれたこと自体なーんも意味なかった。だからいっぱい罪を重ねることでたくさんの死体の上に鎮座することができたと思っている


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