01作品集

□恋とストーカー
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その日は地下鉄で遠くの町に出掛けました







鞄の中にはスマートフォンと財布。





買った物はブランド品バッグ 腕には腕時計






腕時計は12時を指しています




東京都某所のこの町は 夜でも人通りも多く、賑やかです




彼女の住んでいる町と比べたら彼女の町が随分田舎に思えてきます





彼女は地下鉄で移動している訳ですが

...




「まただ」


地下鉄の終電で待ち構えている人

これがネオです



喋りかけても返事はしてくれません

彼はあなたを追い回す事が趣味なのですから

「誰なの.....」

返事はありません



しかし 駅は終電。

楽しい鬼ごっこが始まりました





ネオは黒のダウンジャケットに身を包み、あなただけを見ています




ネオ「やっと見つけた........」


「こっちに来ないで」



あなたはこればかりか大声で叫び、ネオから逃げようとします

ですがネオはあなたから 目を離そうとはしません




走った


ただ黙々と走った



ですがここは都会の真っ只中



何処に行けばいいのか検討もつきません


「電車に乗り継ぐ予定だったんだけど...」




あなたは必死に考えました


「そうだ」

私は思いついた

夜の都会はなるべく明るい所にいた方が良いことに



今、私がいる場所で一番明るいのは.......




_あった



けど それには裏路地を越えなければならない

暗くて狭い 裏路地を越えなければ明るい所にはつかない


それ以外にネオから 逃げる方法はない


周りを見た



ネオの姿はない

......今なら行ける





そう決心して 裏路地を進んだ


ネオ「みーつけた」



「ぎゃああああああ」




溢れんばかりの声で叫んだ



方向感覚を失い、来た道を引き返した


地下鉄の駅のホームに戻り、身を潜める





何分経っただろう






あなたは彼の姿が無いことを確認し、再び地上へ出ました
あなたは一刻も早くネオから逃げ、家へ帰らなければなりません。



家以外に 安全な所はない


「早くしてよ.......」



終電で来る筈がない電車を待つあなた


ネオにとっては絶好のチャンス



でもネオはあなたに触れません。



彼の楽しみはあなたを追い回す事だけ。


恐怖を与え、あなたの頭の中を自分でいっぱいにしたいのです



ネオ「待てよ、捕まえてやる....」

「来ないで」



あなたは狭い路地裏を抜け、必死に走りました





何分経っただろう



あなたは自分の腕時計を覗き込みました



午前3時...



あなたは夜に出歩いた事を後悔し、バス停に寄り掛かります


数分がたち、バスが来ました


「深夜も営業してるのかな」


都会に慣れないあなたは、躊躇う事なく バスへ乗り込みました

深夜のネオン街は どこか怪しげです


「もう追ってきてない...?」


あなたはバス席から運転手の方へ顔を覗かせました


すると


ネオ「いた....」


「ぎゃあああああああ!!!」

バスの運転手はネオ

免許の取得を 既に取っていたのです



ネオ「逃がさない、逃がさないよ」

彼は自分と出会った時の話をし始めました



俺とあなたが出会ったのはこんな日だった

その頃 お前は病んでいて

俺にすがってきた。


すがりついたお前の可愛さと言ったらなぁ...

ネオの瞳が微かに揺れた


「ネオ」
「だがお前は他に好きな人が出来ると言い

俺を捨てた。」

私は頷いた

そしてネオをストーカーにしたのは

自分だったんだな、と気づいた


「ごめんなさい、ネオ...

でも 貴方にもう興味はないの」

新しい仕事を始めて、ネオはもう

゛過去の人になってしまった゛


しんとした風が 沈黙を促す

ネオ「そうか」

「ごめん、ネオ」







__ふっ




「何やってるの!止まって」

タクシーが右に振り切れた。

車は私とネオを連れて 暗い夜道へと

登っていく



最悪の事態が頭を過った




ずっと一緒にいるにはこれしかない

ネオの歪んだ愛情がひしひしと伝わってきた









車は進む


新たな道へ 二人きりの世界へ







fin



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