フランボワーズの手紙

□第七章
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まるで、何が入っているか分からない箱の中へ手を入れるように、彼女は手紙を開いた。


珍しく彼女はミルクティーでもコーヒーでもなく、鮮やかな橙色をしたオレンジジュースを頼んでいる。それと共に入っている氷がカラン、と触れ合う高い音を立て、その音が合図のように俺は小さく口を開けた。



『今回は、なんて書いてあるんでィ』

『……相変わらず、「元気ですか?」って』



「ははは」と乾いた笑いを零したリンは心なしか震えている指先で手紙をなぞる。何も書いていない、その白紙の紙に何が見えているのか分からないが、赤ん坊の頬を撫でるくらい指先に力が入っていない。


見覚えのある白い薄手のニットの服と、大学時代、友人が働いていたパワーストーンショップで買ったというローズクォーツのブレスレット。空調によって流れた髪の隙間から覗く耳には、薄紅色のピアスがはめられていた。


出会った時から何も変わらない……というのは、褒め言葉ではなく乏す言葉なのだろうか。しかしリンは、俺が初めて見た時のままここに居るし、ここに居てくれていた。

そして俺もここに居たし、今もここに居る。



『この間の答え、見つかったのか?』



この間、を説明せずとも察したリン。黙って首を横に振るその姿は、錆びついたロボットのようだ。何故、彼女は離婚を決めたのか。その答えは、恐らく何処を探しても見つかることはないだろう。


そもそも何処かへ隠したわけでもなく、元々存在していないのだった。




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