Novel.2

□White
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自分なんかが場違いな。
そう思いながら高木は鳴り響く鐘を見つめた。

「ねぇ、渉は和装と洋装どっちがいい?」

目の前では恋人がウエディングドレスに身を包み見つめてきていた。

「さっきの和装も素敵だったんですがウエディングドレスも素敵ですね」

肩紐の無いウエディングドレス。

これはずり落ちたらどうするんだと高木は思ったがきっと彼女の胸のサイズならずり落ちる事は無いのだろう。

「だから和装と洋装どっちがいいの?」

「僕はどっちでも大丈夫ですよ、どっちでも美和子さんは素敵です」

「ねぇ、どっちでもいいじゃなくてどっちがいいのか聞いてるのよ」

そんなやり取りに彼女は怒る。

「すみません、けど美和子さんどっちでも素敵で決められないんです」

高木がそう言うと佐藤は顔を赤くした。

「そういう渉こそ似合ってるじゃない。いつものスーツとは全然雰囲気が違うわよ」

「ありがとうございます、美和子さんに見合う男にならないとダメなもので」

じゃないと親衛隊に取られます、なんて口が裂けても言えない。

挙式の日は10月31日。

まだもう少し日付がある。

ゆっくり準備を進めればいい。

「10月のあまり忙しくならなさそうな土日にって思ってたけどまさかハロウィンになるとはねぇ…」

「まぁ涼しくなり始めたいい季節ですよね」

「高木くんそれまでに男、磨いとくのよ?さっき自分で言ったんだから」

「はっはい!!」

佐藤は笑いながらベールを被った。

「意外と重いのね」

装飾や長いレースなどを纏ったベールはなかなかの重みだ。

「これ、僕があげるんですよね」

「何言ってるのよ当たり前でしょ」

「これを上げたらほんとに美和子さんは僕のお嫁さんになるんですね」

「上げなくてもお嫁さんにはなるけど…」

「ありがとうございます」

「ねぇ、渉はさっきからどうしたのよ」

「感無量です」

もうだからなんなのよと佐藤は笑った。

世界一可愛い花嫁さん。

もう少しでお嫁に迎えるから無茶なことはしないでくださいね。



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