Novel.1

□キンモクセイ
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秋が来た。
そう訪れを感じさせるのは風に乗って香るキンモクセイのおかげだろう。

年が明け、春が訪れ夏が来る。
そしてすぐに秋も来る。
一年があっという間に感じる。

渉くんが北海道に連れていかれたのはもう何年前だっけ?

隣ですやすや眠る高木渉を見て佐藤美和子は微笑む。

あんな事があったのにケロッと復帰する。
なんてタフな男なんだろう。

「あれ……美和子さん起きてたんですか」

隣で寝域を立てていた男が目を覚ました。
邪魔しちゃったかな?と少し反省しつつも佐藤は高木の髪の毛を指ですくった。

「美和子さんいい香りしますね。キンモクセイの香りですか?」

「そう?さっき洗濯物干すために外に出たからかな」

庭のキンモクセイが秋の訪れを告げる。

「美和子さんってキンモクセイみたいですよね」

「え?」

「キンモクセイって花言葉は謙虚って意味なんですよ、美和子さんに似てますよね」

自分ではよくわからないが褒められているのだろう。

「小さい花ながらも香りを放って自分のことをアピールするんです。だけどほかの花と違って小さく控えめに」

そう言うと高木は二度寝に入った。

「どういう意味なのよ…でもありがとう」

そう言うと佐藤は高木の横から立ちキッチンへ向かった。

もうすぐ時刻は正午。

お昼ご飯を作って笑顔で渉くんを起こそう。



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