Novel.1
□紅葉
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「ねぇ、渉くんって紅葉好き?」
家の周りの木も赤く、茶色くなり、そろそろ秋の訪れを感じる。
「ええ、好きですよ。掃除は大変ですが綺麗ですし」
「やっぱ掃除大変よねぇ。私もここに住んだら掃除地獄のお出ましね」
「それまでには広い家を探しますよ」
「それは楽しみにしておくけどここも好きよ」
そんなことを話してるうちに夕飯の時刻になる。
テレビをつけ、佐藤が作ってくれた夕飯を食べる。
今日の献立は栗ご飯に秋刀魚の塩焼き、かぼちゃの煮物と秋づくしだ。
「昔ね、もみじ饅頭って本物のもみじが入ってると思ってたの。だけど実際は入ってないのね」
もみじ饅頭は広島県名産品である。
「もみじ饅頭美味しいですよね、僕あのカスタード好きなんですよ」
「あんこじゃないの?」
「他にも抹茶とかチョコレートとか変わったものも増えてるんですよ」
「へぇー」
佐藤はあまり旅行には出かけない。
出張も母とふたり暮らしだからか、女性だからか受けることは少ないようだ。
「今度広島行きたいなぁ。昔父が連れていってくれたの。その時紅葉を食べたんだけど夢だったのかしら」
一度広島には行っている。だが、小さい頃だったからか記憶が薄いのだ。
「今度行きましょうよ、佐藤さんの食べたもみじの正体も教えますよ」
「知ってるの?!」
「えぇ、だからまた休み合わせていきましょう」
そう言うと佐藤は嬉しそうにご飯をかきこんでパソコンをつけた。
どれだけ楽しみなんだろう。そう思いながら高木はゆっくりご飯を味わった。